東京都で延床面積2,000㎡以上の建築物を新築・増築・改築する際に、提出義務があるのが「東京都建築物環境計画書」です。
環境への配慮を目的に定められた制度で、「2050年ゼロエミッション東京」に向け定期的に内容が見直されています。
この記事では、東京都建築物環境計画書の目的や取り組みに対する3段階評価や申請時の注意点について詳しく解説します。
東京都建築物環境計画書制度とは
東京建築物環境計画書制度とは、東京都で延床面積2,000㎡以上の建築物を新築・増築・改築する際に申請を義務づけられている制度です。
建築主は建築物の環境配慮事項などについて評価を行い、東京都に東京建築物環境計画書の提出が必要です。
制度の主な目的は、下記2点です。
- 建築主へ環境配慮に対する自主的な取り組みを促す
- 環境に配慮した建築物が高く評価される市場を形成する
特に東京都では、地球温暖化の原因のひとつであるCO2排出量の7割が、建築物に起因しているとされています。
そのため独自の環境計画書制度を設け、建築主が積極的に環境に配慮した建築物の施工に取り組む仕組みづくりに力を入れています。
2025年度施行予定!改正ポイント5点
ここでは2022年に周知し、2024年度と2025年度より施行される主な改正ポイントについて5つ解説します。
省エネ性能基準の新設・強化
省エネ性能のさらなる向上を図るため、住宅以外の用途の建築物で基準値が厳しくなります。
建築物の使用用途によって、基準値が新設されたのも特徴です。
条件 | 現行 | 改正後 | ||
---|---|---|---|---|
断熱性能BPI | 住宅以外の用途の延べ床面積が2,000㎡以上(工場等を覗く) | 1.0 | 1.0 | |
省エネ性能BEI | 工場 | 住宅以外の用途の延べ床面積が2,000㎡以上 | 1.0 | 0.75 |
事務所・学校・ホテル・百貨店 | 0.8 | |||
病院・飲食店・集会場 | 0.85 |
引用:東京都環境局「カーボンハーフの実現に向けた建築物環境計画書制度の強化・拡充について」
なお、住宅以外の用途を目的とした建築物の改正は、2024年度より施行されています。
また現行法では住宅用途の建築物の基準は設けられていませんでしたが、改正により新設されます。
条件 | 現行 | 改正後 | |
---|---|---|---|
断熱性能 UA値(W/㎡・K) | 住宅の用途の延べ面積が2,000㎡以上 | 基準なし | 0.87 |
省エネ性能BEI | 1.0 |
引用:東京都環境局「カーボンハーフの実現に向けた建築物環境計画書制度の強化・拡充について」
住宅用途の基準値は、2025年度より施行予定です。
再生可能エネルギー利用設備の設置義務
現行では再生可能エネルギー利用設備設置義務はありませんでしたが、改正後は義務付けされます。
太陽光発電機等の設置基準容量を求める計算式は、下記のとおりです。
- 設置基準容量(kW)=建築面積(㎡) × 設置基準率5% × 0.15(kW/㎡)
敷地内への太陽光発電機を設置するのが原則ですが、建築物に太陽光発電機の設置が難しい場合や、発電に不向きな敷地である場合は、敷地外への設置などが認められます。
電気自動車充電設備の設置義務
現行では電気自動車充電設備の設置義務はありませんでしたが、電気自動車の普及を見据え、新たな基準が設けられます。
基本的に、新築の建築物のみが対象です。
適用条件 | 実装設備基準 | 配管等設備基準 | |
---|---|---|---|
専用駐車場 | 専用駐車場を5区画以上有する場合 | 区画の20%以上(上限10台) | 区画の50%以上(上限25台) |
共用駐車場 | 共用駐車場を10区画以上有する場合 | 1区画以上(上限なし) | 区画の20%以上(上限10台) |
引用:東京都環境局「カーボンハーフの実現に向けた建築物環境計画書制度の強化・拡充について」
配管等の設備は、今後使用者ニーズが増えた際に円滑に増設するための事前準備です。
環境配慮の取り組み3段階評価の強化
東京都建築物計画書では、環境配慮に対する建築主の取り組みを3段階で評価しますが、より高い取り組みを支持するため、新たな観点を加えた基準に見直されています。
評価項目 | 2025年度強化・拡充内容 |
---|---|
エネルギー使用の合理化 | ・断熱・省エネ等の各評価段階の引き上げ ・遠隔管理・制御等を可能とする備えを評価する指標等の追加 など |
資源の適正利用 | ・低炭素資材の利用等の取り組みを評価する指標等の追加 など |
生物多様性の保全 | ・生物多様性に配慮した緑化を評価する指標等へと再構成 |
気候変動への対応 | ・災害ハザードエリアを踏まえた対策や災害時用電源の確保 など |
引用:東京都環境局「カーボンハーフの実現に向けた建築物環境計画書制度の強化・拡充について」
公表情報の充実化
環境保全の取り組みをしている建築物が評価される市場を目標に、環境性能をわかりやすく示す仕組みが、改正後はさらに強化されます。
例えばマンションの環境性能表示では、今回の改正で強化された基準を反映し、ZEV充電設備の設置台数表示も追加。
住宅用途以外の建築物でも、基準強化の内容が反映されます。
計画で必要な環境配慮事項と評価項目
東京都建築物環境計画書の作成に必要な配慮事項と評価項目を、4つ解説します。
エネルギー使用の合理化
エネルギー使用の合理化の評価は、下記の5項目です。
- 建築物の熱負荷の低減
- 再生可能エネルギーの利用
- 省エネシステムの高効率化
- 地域におけるエネルギーの有効利用
- エネルギー利用の最適運用を可能にするための仕組みづくり
主にエネルギーの使用の低減と、太陽光発電等による使用するエネルギーの生成、使用するエネルギーの効率的な活用の3点による合理化について評価します。
資源の適正利用
資源の適正利用の評価は、下記の3項目です。
- 躯体などで再生骨材やリサイクル材の利用
- 断熱材用発泡剤や空気調和設備用冷媒使用によるオゾン層の保護及び地球温暖化の抑制
- メンテナンスや劣化対策等による建築物の長寿命化
建築物を構築する躯体などの建材にリサイクル材を使用したり、建築物の寿命を延ばしたりすることで、今ある資源を有効活用しているか評価します。
自然環境の保全
自然環境の保全の評価は、下記の2項目です。
- 水の有効利用及び下水道施設への負荷低減のための雑用水利用や雨水浸透
- 樹木や芝など緑の量や質の確保、維持管理
CO2を吸収してO2の生成を行う緑を増やしたり、雑用水を使用して下水処理時に使用するエネルギーを削減したりすることで、自然環境の維持・改善が行われているか評価します。
ヒートアイランド現象の緩和
- 建築設備からの人工排熱対策
- 敷地と建築物の被覆対策
- 望ましい風環境の確保
- EVおよびPHV用充電設備の設置
東京都など都市部では地表面の人工化やエネルギー消費に伴う人口排熱の増加により、郊外よりも気温が上昇しているため、人工排熱対策や電気自動車普及への促進などを評価します。
取り組みに対する3段階評価
東京都建築部環境計画書では、建築物の環境配慮の取り組みを3段階で評価します。
段階 | 条件 |
---|---|
1 | 法律等が定める基準を上回る取り組みが行われている |
2 | 段階1よりもさらに高い水準の環境配慮が行われている |
3 | 最高水準の環境配慮が行われている |
段階評価は、建築物の質や水準を明確にし、建築主や建物使用者が一目で理解できる情報を提供するのが目的です。
また段階を用意することで建築主の負担を減らし、自主的な環境配慮と浸透を目指しています。
東京都建築物環境計画届出の流れ
ここからは実際に東京都建築物環境計画を届出する際の流れについて、詳しく解説します。
届出対象建築物
届出が必要な建築物は、都内で新築・増築・改築予定で延べ床面積が2,000㎡以上の住宅・非住宅です。
2,000㎡以下の建築物の提出は、建築主の任意です。
必要書類
届出に必要な書類は、下記のとおりです。
建築計画時 | ・建築物環境計画書提出書 ・建築物環境計画書 ・取組・評価書 ・再生可能エネルギーの利用に関わる検討シート ・チェックシート ・配置図・基準階平面図・断面図及び立面図 ・取組・評価書での評価内容が確認できる図書 ・建築物エネルギー消費性能確保計画(案) ・取組・評価書での評価内容が確認できる許認可の届出書類等の写し ・委任状(建築主以外が提出する場合) |
計画書の変更時 | ・建築物環境計画書の変更届出書 ・建築物環境計画書 ・取組・評価書 ・再生可能エネルギーの利用に関わる検討シート ・変更内容が確認できる図書等 ・委任状(建築主以外が提出する場合) |
工事完了時 | ・建築物等工事完了届提出書 ・建築物環境計画書 ・取組・評価書 ・再生可能エネルギーの利用に関わる検討シート ・実施結果が確認できる図書等 ・建築基準法における検査済証の写し ・委任状(建築主以外が提出する場合) |
引用:東京都環境局「東京都建築物環境計画書作成の手引き(第5.2版)」※第一章の3~6ページ参照
書類は東京都環境局の「建築物環境計画書制度」からダウンロードできます。
申請時は、必ず最新の様式を使用しましょう。
届出の手順
計画書の届出フローは、下記の流れです。
- 建築主が東京都建築物環境計画書を東京都へ届出
- 東京都が内容を確認し評価を公表、建築主へ環境性能評価書(設計)の交付
- 建築物の工事着手(計画を変更する場合は工事着手の15日前までに届出)
- 建築物が完成後、建築主が東京都へ工事完了を届出
- 東京都が内容を確認し評価を公表、建築主へ環境性能評価書(完了)の交付
- 建築主が環境性能評価書交付を東京都へ届出
- 東京都が内容を確認、届出の受理
マンションを建設する場合、環境性能評価書(設計)の交付を受けた後にマンション環境性能表示の広告掲載や届出が必要です。
東京都建築物環境計画書を作成する際の注意点
申請は、下記のいずれか早い日までに提出するよう定められています。
- 建築基準法の確認申請等の日
- 都市の低炭素化の促進に関する法律に基づく認定申請の日
申請が通るまで着工ができないため、申請が遅れたり書類にミスがあると決裁が下りず、建築物の完成が遅れてしまう可能性があります。
計画書の申請には省エネ計算等の専門知識が必要なため、手間やコストがかかると感じた場合は代行会社に依頼するのがおすすめです。
まとめ
東京都建築物環境計画書は、2050年のゼロエミッション東京実現に向け、延床面積2,000㎡以上の建築物に義務付けられた制度です。
東京都ではCO2排出量の7割が建築物が使用するエネルギーから発生しているため、環境に配慮した建築物の積極的な採用が必須です。
環境計画書の作成には省エネに関する専門的知識が欠かせず、作成した書類に不備があると着工が遅れる恐れがあります。
円滑に申請したい場合は、申請を代行してくれる代行会社の利用も検討しましょう。
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