省エネ計算における仕様基準は、建築物の省エネ性能が基準に適合するかを簡易に判定できる仕組みです。
省エネ計算なしで省エネ基準への適合を確認できるため、最近注目され始めています。
今回はその仕様基準について、特徴やメリット、注意点を解説します。あわせて、省エネ適判を省略できる条件や、着工後の設計変更・完了検査までの実務も整理します。仕様基準を詳しく知り、適切に活用するため、ぜひ最後までご覧ください。
この記事でわかること
- 自案件で仕様基準を使えるか(住宅・構造・設備の観点)を判定できる
- 床暖房など仕様基準で扱えない設備に当たったときの代替ルートがわかる
- 着工後に設計変更が生じた場合の再適判の要否と、完了検査で見られる項目がわかる
※本記事は2026年8月時点の法令・告示・技術的助言に基づいています。給湯暖房一体型を仕様基準で評価できるよう措置した技術的助言(令和8年4月24日 国住参建第617号)、および仕様表作成ツール(2026年5月21日版)に対応しています。
省エネ計算の「仕様基準」とは何か
はじめに「省エネ基準」と「仕様基準」の違いを、簡単にまとめます。言葉は似ているものの、指す対象はまったく異なるこの2つの言葉。
あらためて、違いを確認しておきましょう。
省エネ基準とは
省エネ基準は、建築物省エネ法(建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律)およびこれに基づく省令・告示が定める、建築物のエネルギー消費性能を測る基準です。
省エネ基準は、2つの性能で構成されます。
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種類 |
内容 |
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外皮性能 |
屋根・壁・窓など、外皮部分の断熱性能を示す基準(※住宅が対象) |
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一次エネルギー性能 |
設備機器の省エネ性能を示す基準 |
一次エネルギー性能は「BEI」と呼ばれ、「設計一次エネルギー消費量」を「基準一次エネルギー消費量」で割った結果です。BEIが1.0以下(BEI≦1.0)で、省エネ基準に適合します。
一般的に「省エネ計算」というときは、この計算を指します。非住宅建築物の省エネ計算方法は、標準入力法(もっとも精緻)・モデル建物法・小規模版モデル建物法の3つです。
ちなみに、戸建て住宅の省エネ計算方法は、2025年4月の制度見直しで「簡易計算ルート」や「モデル住宅法」が廃止されたため、現在は「標準計算ルート」に一本化されています(計算を行わない仕様基準ルートを除く)。

引用:省エネ基準の概要|国土交通省
仕様基準とは
仕様基準とは、省エネ計算なしで省エネ基準への適合を確認できる方法です。
「外皮」「一次エネルギー消費量」の既定値と、チェックリストへの入力値を照合し、適合度を判定します。
省エネ計算が不要なため、簡便な手法といえます。
仕様基準のチェックリストをダウンロードできるサイトや、具体的な使い方は後述します。
省エネ計算の仕様基準が注目される背景
省エネ基準の適合判定で、仕様基準が注目される背景を見てみましょう。2025年4月に始まった、すべての新築建築物の省エネ基準適合義務が、主な理由です。
1.全新築住宅に省エネ基準への適合が義務付けられることになった
建築物省エネ法が改正され、2025年4月以降着工のすべての新築建築物は、省エネ基準への適合が義務付けられました。これまで届出義務や説明義務に留まっていた、小規模(300m2未満)の非住宅や一般の戸建て住宅も、省エネ基準に適合させなければなりません。
なお、対象拡大に伴い、従来の届出義務制度・説明義務制度は2025年4月に廃止されています。

引用:建築物省エネ法改正に関するリーフレット|国土交通省
省エネ基準適合義務の改正は、地球温暖化対策が主目的です。
省エネ基準を満たす建築物を増やし、建築物が排出する温室効果ガス・建築物の消費エネルギーの削減を目指しています。
2.省エネ基準適合の義務化により、すべての新築建築物で省エネ計算が必要になる
省エネ基準適合の義務化は、全建築物で省エネ計算が必要になることを意味します。
ところが、省エネ計算は、緻密で複雑な工程が必要です。
全建築物の省エネ判定を計算によって行うのは、建築設計現場に膨大な負担をもたらす恐れが出てきました。
そこで、より簡便に判定できる仕様基準が見直しされた、というわけです。
3.省エネ計算の負担を軽減するため、仕様基準が改正された
省エネ計算の負担軽減、また省エネ建築物の円滑な着工を目指し、2022年11月に仕様基準が見直しされました。
見直しにより、仕様基準は現状に即した使いやすい形になりました。
スピーディーな省エネ基準適合判定が可能になり、建築設計現場の負担軽減が期待されています。
仕様基準で省エネ適判が省略できる条件
仕様基準の最大のメリットは、省エネ適判(省エネ適合性判定)を省略できることです。ただし省略できるのは、外皮性能基準と一次エネルギー消費性能基準の両方を、仕様基準または誘導仕様基準で評価した住宅に限られます。どちらか一方でも計算に切り替えた時点で、通常どおり適判が必要になります。
「外皮だけを仕様基準で評価し、一次エネルギーはWebプログラムで計算する」という構成では、この要件を満たしません。大部分を仕様基準で処理したつもりでも、制度上は片方でも計算に触れた時点でルートが変わる点が、誤解の集中する箇所です。
仕様基準以外に、適判を省略できる2つのルート
住宅で適判を省略できる方法は、仕様基準等によるルートを含めて3系統あります。案件に応じて選択してください。
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ルート |
主な要件 |
提出のポイント |
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① 仕様基準等 |
外皮・一次エネの両方を仕様基準または誘導仕様基準で評価 |
確認申請図書に仕様を明示 |
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② 設計住宅性能評価書 |
断熱等性能等級4以上かつ一次エネルギー消費量等級4以上 |
確認済証交付前までに提出 |
|
③ 長期優良住宅 |
認定通知書または長期使用構造等である旨の確認書 |
確認済証交付前までに提出 |
提出期限の運用は機関によって細かく異なるため、申請先の要領を必ず確認してください。なお、BELSの評価書では省エネ適判を省略できません。省エネ性能の表示制度と、適合性判定の手続きは別系統だからです。ここは相談を受ける頻度が非常に高い誤解です。
適判が不要でも、省エネ基準への適合義務は消えない
整理しておきたいのが、審査の省略と適合義務の免除はまったく別だという点です。たとえば、都市計画区域等の内で平屋かつ200㎡以下、かつ建築士が設計・工事監理を行った建築物は、省エネ基準への適合性審査が省略されます。しかしこれは審査が省略されるだけであって、省エネ基準に適合させる義務そのものは残ります。審査対象外の規模であっても、適合確認は必ず行い、その根拠資料を残しておいてください。
適用可否を確認する3つの質問
自案件で仕様基準(適判省略)を使えるかは、次の3つを順に確認すると判断できます。
- 住宅か非住宅か:仕様基準は住宅部分に適用される制度で、事務所・店舗などの非住宅には適用できません(非住宅はモデル建物法等で対応)。
- 戸建か共同住宅か:共同住宅は住戸単位の判定が加わります(後述)。
- 外皮・一次エネの両方を仕様基準で評価しきれるか:ここでつまずく案件が実務では最も多くなります。
省エネ計算の仕様基準・改正の要点3つ
2022年の仕様基準改正で押さえておきたいポイントを、詳しく解説します。
構造・建て方別の基準設定
改正前の仕様基準は「共同住宅=鉄筋コンクリート(RC)造」「戸建て住宅=木造・鉄骨造」を想定していました。ただ、建築技術の発展により、木造の共同住宅やRC造の戸建住宅も登場しています。
そのため、最新の建築方法に対応した基準が新設されました。RC造の共同住宅では、水準も見直されています。建築物に合った、より詳細な評価が可能になっています。

引用:共同住宅等の外皮性能の評価単位の見直し 及び 住宅の誘導基準の水準の仕様基準(誘導仕様基準)の新設について|国土交通省
開口部比率の廃止
改正前の仕様基準は、開口部比率(外皮面積に占める開口部面積の比熱)を計算しなければなりませんでした。熱貫流率と日射遮蔽対策の基準を確認するためです。
見直しの折、開口部比率の区分が廃止されています。(令和4年国土交通省告示第1105号)熱貫流率の基準値の確認だけで済むようになり、判定基準も簡素化されました。

引用:同上
誘導仕様基準の新設
誘導仕様基準と呼ばれる新しい水準も設定されました。(令和4年国土交通省告示第1106号)。これは、省エネ性能の高いZEH基準の住宅を増やすことが目的です。省エネ計算をしなくても、ZEH水準への適合を判定できます。
ただし、誘導仕様基準の新設は住宅のみが対象です。非住宅の建築物には、誘導仕様基準の新設はありません。なお、誘導仕様基準は住宅性能表示制度・長期優良住宅制度・低炭素建築物の適合確認にも活用できます(詳しくは後述)。

引用:同上
省エネ計算の仕様基準チェックリストの使い方
ここからは、仕様基準チェックリストの使い方を具体的に解説します。
国土交通省のホームページで仕様基準を確認
まず、仕様基準のガイドブックを確認しましょう。
国土交通省のホームページに、地域区分ごとのガイドブックが紹介されています。
省エネ基準への適合を判定する「省エネ基準編」と、より高性能な住宅を対象とした「誘導基準編」に分かれているため、注意してください。平成28年国土交通省告示第266号が省エネ基準、令和4年国土交通省告示第1106号が誘導基準に対応します。

引用:資料ライブラリー|国土交通省
チェックリストに従って数値を入力
該当のガイドブックを開くと、解説の後にチェックリストが続きます。チェックリストに従って断熱材・開口部・設備機器の数値を記入してください。最後に、基準への適合を判定します。
断熱材は、熱貫流率で確認する方法と熱抵抗で確認する方法があり、熱抵抗(厚さ÷熱伝導率)で確認するほうが作業は簡便です。製品ごとの性能値はガイドブックには載っていないため、断熱材の熱抵抗は断熱建材協議会の公開情報、設備機器の効率は住宅性能評価・表示協会の温熱・省エネ設備機器等ポータルサイトで確認します。

引用:木造戸建住宅の仕様基準ガイドブック(4~7地域版)|国土交通省
仕様表作成ツール(シートC)を申請図書に使う
仕様基準を用いる場合、外皮計算書は不要になりますが、断熱材・開口部・住宅設備の仕様書は確認申請に必要です。ここで活用したいのが、国土交通省が公開する「仕様基準に基づく仕様表作成ツール」です。このツールのシートC(仕様表)は設計図書の一部として申請時に利用できます。仕様表を別途作図している場合は、この時点で作業を見直す価値があります。
ツールは2026年5月21日付で更新されています(給湯暖房一体型対応版の不備対応)。古い版を使い続けていないか、着手前に必ず確認してください。
木造戸建以外はガイドブックが未整備|自作か標準計算かを判断する
見落としやすい点として、ガイドブックと仕様表作成ツールが用意されているのは木造戸建住宅とRC造戸建住宅(8地域のみ)に限られます。仕様基準は戸建・共同住宅、木造・S造・RC造を問わず活用できますが、それ以外の構造では基準値を参照しつつ告示から自ら仕様表を作成する必要があります。
告示から仕様表を組み立てる作業は、初回であれば半日から一日程度を見込むべき規模で、構造種別によって熱橋の扱いなども変わります。同一仕様を繰り返す分譲・規格住宅なら自作コストを回収できますが、一件ごとに仕様が変わる案件では、最初から標準計算を選んだほうが早い場合もあります。ルート選定の前に、支援ツールの対応範囲を確認してください。
仕様基準で扱えない設備と、給湯暖房一体型の2026年措置
仕様基準は、告示に列挙された仕様に該当するかを照合する仕組みです。したがって、告示に規定のない設備を採用した瞬間に、その設備については適否を判断できなくなります。国土交通省のFAQでは、床暖房やコージェネレーション設備は仕様基準に規定がないため仕様基準では適合を確認できず、省エネ計算によって確認する必要があると示されています。
つまり、施主から床暖房の要望が出た時点で、仕様基準だけで完結させる道は閉じます。
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設備区分 |
注意すべき点 |
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暖房 |
床暖房、温水ルームヒーター等は告示に規定がなく仕様基準で扱えない |
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冷房 |
エアコンはエネルギー消費効率の区分で限定される(任意の機種を選べるわけではない) |
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換気 |
チェックリストの選択肢が限られる。該当がない場合は告示原文または計算で確認 |
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給湯 |
地域区分に応じて仕様が定められている。2026年に一体型の取扱いが整理された(下記) |
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照明 |
非居室の白熱灯等に制限がある |
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創エネ |
太陽光発電は仕様基準の評価に載らない |
2026年に評価可能となった給湯暖房一体型
以前は取扱いが明確でなかった給湯暖房一体型の熱源機について、国土交通省は令和8年4月24日に発出した技術的助言(国住参建第617号)により、給湯・暖房一体型を仕様基準でも評価できるよう措置しました。あわせて、仕様表作成ツールも一体型に対応する形で更新されています。2025年に書かれた解説の多くはこの措置を反映していないため、「一体型は使えない」という古い記憶のまま設計を進めると、本来使える選択肢を自ら捨てることになります。
施主支給・後付け設備の扱い
エアコンを施主支給とし、引渡し後に設置するケースも実務では問題になります。省エネ計算の実務では、適判時点で未設置が想定される設備は設置しないものとして扱うという整理があり、その前提で仕様基準の要件を満たせるかを確認しておく必要があります。設備の設置確定タイミングと申請タイミングのずれが手戻りを生むため、判断が分かれる論点は設計初期に申請先へ確認してください。
設備が制限に当たったら|仕様・計算併用法という選択肢
設備が仕様基準の枠に収まらないと判明したとき、いきなり全面的に標準計算へ切り替える前に、もう一段階あります。住宅の省エネ性能は外皮性能と一次エネルギー消費量の2つで評価され、それぞれに仕様基準による方法と計算による方法が用意されています。この2つは独立しているため、外皮は仕様基準・一次エネルギーは計算(またはその逆)という組み合わせが可能です。これが仕様・計算併用法です。
ただし重要なのは、併用法を採っても省エネ適判は必要だという点です。併用法で得られるのは外皮計算などの作業量の削減であって、手続きの削減ではありません。目的が適判の回避であれば床暖房の採用可否を施主と早期に協議する必要があり、目的が計算工数の削減であれば併用法が有効な選択肢になります。「自分は手続きを削りたいのか、計算工数を削りたいのか」を先に言語化してください。
共同住宅・併用住宅で仕様基準を使う場合の条件
共同住宅でも仕様基準は使えますが、条件が戸建より厳しくなります。国土交通省の「住宅の省エネルギー基準と評価方法2024 共同住宅等Q&A」によれば、確認申請図書にすべての住戸が仕様基準に適合していることを示す情報を明示すれば省エネ適判は不要となり、外皮基準または一次エネルギー消費量基準のいずれかを標準計算で評価する住戸を含む建築物については、全住戸を含む建築物について適判が必要になると整理されています。
つまり、10戸のうち9戸が仕様基準に収まっていても、1戸だけ標準計算に頼らざるを得なければ、建物全体が適判の対象になります。住戸タイプが複数ある共同住宅では、最も条件の厳しい住戸を基準に仕様を決めるのが実務上の定石です。
また、1階が店舗・2階以上が住宅という店舗併用住宅では、非住宅部分が存在する時点で仕様基準による適判省略は成立しません。省エネ適判の要否は建築物単位で判断されるため、住宅部分だけが仕様基準に適合していても、建物全体としては適判手続きが必要になります。共同住宅では界壁・界床が熱的境界として扱われ、断熱構造とすべき部位の考え方が戸建と異なる点にも注意してください。
確認申請書 第二面 第8欄の記入方法
2025年4月以降、確認申請書 第二面の「建築物エネルギー消費性能確保計画の提出」欄は記入が必須になりました。従来この欄は空欄で処理していたため、記入漏れによる補正が発生しやすい箇所です。
仕様基準ルートで省エネ適判を省略する場合は、「提出不要」の欄にチェックし、その理由として該当する号番号を記入します。適判ルートの場合は、提出先の登録判定機関名または所管行政庁名と提出年月日を記入します。記入内容の細部は申請先の様式運用にも左右されるため、初めて記入する際は事前に申請先へ確認しておくと確実です。
着工後に設計変更が生じたときの扱い
実施設計から着工後にかけて設備の品番が変わることは日常的に起きますが、このとき必要な手続きは、評価方法をどちらの方向へ動かしたかで決まります。この扱いは方向によって非対称で、取り違えると不要な再適判で工期を浪費するか、必要な計画変更を怠って完了検査で発覚するかのどちらかに転びます。
適判後に仕様基準へ戻る方向:仕様・計算併用法または標準計算で適判を受けた後、設計を見直して仕様基準による評価に変更する場合は、一義的には再度の適判は不要で、完了検査で仕様基準への適合を確認することになります(任意で再適判を受けることも可能)。設備がグレードダウンして結果的に仕様基準の範囲に収まった場合、反射的に再適判を申し込む必要はありません。
仕様基準から離れる方向:仕様・計算併用法で評価する住宅部分の外皮が仕様基準に適合しなくなった場合は、外皮計算を行う必要があり、これは評価方法の変更に該当するため計画変更(再適判)が必要になります。
仕様基準の枠内に収まる変更(床面積や開口部面積が変わっても断熱性能などが基準値を満たす範囲)であれば、軽微な変更として処理できます。変更が生じたら、手続きを調べる前に「どちらの方向へ動いたか」を先に確認してください。
参照:国土交通省「改正建築物省エネ法オンライン講座 質疑応答」
完了検査で確認される項目
適判がないぶん、仕様基準ルートは「確認済証が下りれば終わり」という感覚になりがちですが、省エネ基準への適合は完了検査の対象でもあります。日本建築行政会議が編集した「省エネ基準適合義務対象建築物に係る完了検査の手引き」では、住宅部分で仕様基準を用いた場合も含めて、建築主事や指定確認検査機関が省エネ基準に係る施工状況を検査することが前提とされ、仕様基準用の工事監理報告書や完了検査チェックシートが整備されています。検査済証が交付されなければ引渡しはできません。ゴールは確認済証ではなく検査済証です。
検査では、設計図書に記載した仕様と実際の施工内容の一致が照合されます。特に断熱材の厚さと種類、設備機器の型番は、現場の都合や納期の事情で最も変わりやすい項目です。着工前に仕様基準用の工事監理報告書と完了検査チェックシートに目を通し、何が検査対象になるかを施工者と共有しておくと、指摘を大きく減らせます。
誘導仕様基準(ZEH水準)を選ぶべきケース
仕様基準には、省エネ基準に対応するもの(平成28年告示第266号)と、誘導基準に対応するもの(令和4年告示第1106号)の2種類があります。後者が誘導仕様基準で、ZEH水準に相当する水準を計算によらず確認できます。誘導仕様基準は住宅性能表示制度・長期優良住宅制度でも活用可能で、低炭素建築物への適合確認にも使えます。
省エネ基準は遅くとも2030年度までにZEH水準へ引き上げられる方針が示されています。将来の引上げを見据え、いま誘導仕様基準で自社標準仕様を組み直しておく選択には十分な合理性があります。
ただし注意点として、仕様基準には太陽光発電などの創エネルギー設備を入力する枠がなく、評価に反映されません。ZEH認証の取得や、創エネを前提とする補助金・認定を狙う案件では、計算ルートが前提になります。適判を避けたいという理由だけで仕様基準を選ぶと、後から補助金の要件を満たせないと判明することがあるため、設計初期に潰しておきたい論点です。
省エネ計算で仕様基準を利用するメリット
省エネ計算において、仕様基準を使うメリットを3つ紹介します。
細かな計算をせずに基準への適合を判定できる
仕様基準はチェックリストに記入するだけで、省エネ基準・誘導基準への適合が判定できます。省エネ計算では必須の部位・設備ごとの細かな計算もいりません。チェックリストを使って、施主への性能説明も可能です。
建築確認・省エネ適合審査の手間や費用が軽減される
住宅で外皮・一次エネの両方を仕様基準で評価した場合、新1号建築物(300㎡超や木造3階建て等)で求められる独立した「省エネ適合性判定」の手続きが不要になります(当然、適判の申請費用も不要です)。また、そもそも適判対象外(確認審査で一元化)となる新2・3号建築物(一般的な木造2階建て等)であっても、詳細な計算書の作成・審査プロセスが省かれ「仕様表」の確認のみとなるため、実務上の手間を大幅に削減できます。
また、着工後に床面積・開口部面積の変更が発生した場合も、基準値内なら「軽微な変更」にできる点もメリットでしょう。
さまざまな制度や申請に利用できる
仕様基準は、省エネ適合判定のほかにも、以下のようなさまざまな用途に活用できます。
- 住宅ローン減税の省エネ基準適合住宅の基準
- フラット35、BELS、住宅性能評価などの申請図書の一部
- 長期優良住宅適合性審査の申請図書の一部
- 建築主への説明資料 など
仕様基準が向いている案件・向いていない案件
設備の自由度を取るか、手続きの軽さを取るかで、選ぶべき方法は変わります。案件条件から整理すると次のとおりです。
|
案件条件 |
仕様基準 |
併用法 |
標準計算 |
|
設備・間取りにこだわりがない |
◎ |
○ |
○ |
|
床暖房・熱交換換気を採用したい |
× |
○ |
◎ |
|
上位等級・補助金・ZEHを狙う |
× |
△ |
◎ |
|
木造戸建(ガイドブック対応地域) |
◎ |
○ |
○ |
|
S造・共同住宅 |
△ |
○ |
◎ |
|
着工までのスケジュールが厳しい |
◎ |
△ |
△ |
|
着工後の変更が見込まれる |
◎ |
△ |
△ |
仕様基準は、どんな形状の建物でも基準を満たせるよう安全側に設定されているため、断熱材や設備のスペックが過剰になりやすく、建材コストが上がりやすい性質があります。一方、標準仕様が固まっている分譲・規格住宅ではこの特性は欠点になりません。自社の受注構造に照らして選ぶのが合理的です。
省エネ計算の仕様基準チェックリストの注意点3つ
仕様基準を使う前に、知っておきたい注意点が3つあります。それぞれを、詳しく見てみましょう。
「設備機器」に記載がない住宅設備もある
仕様基準のチェックリストには、基準に適合する設備機器の一覧も掲載されています。

引用:木造戸建住宅の仕様基準ガイドブック(4~7地域版)|国土交通省
ただ、メーカーが用意するすべての設備機器を網羅してはいません。リストに掲載がない設備は、チェックリストでの省エネ基準・誘導基準への適否が確認できない点に注意が必要です。
仕様一覧にない設備を設置する場合、エネルギー消費性能計算プログラムで基準への適否を確認します。(この場合は省エネ計算となり、適判が必要になります)。
断熱材と開口部の数値
チェックリストの「断熱材」「開口部」に入力する数値にも、注意してください。
まず、断熱材の欄には、熱抵抗値(R値)を記入します。断熱部位および断熱工法によって、基準値が異なります。複数の工法を使う場合は、工法ごとに基準値を満たさなければなりません。また、複数種類の断熱材を使う場合は、R値が低いほうを記入します。
開口部の欄には、熱貫流率(U値)を記入します。複数の仕様を採用する場合は、もっとも不利になる「U値が高い(数値が大きい=断熱性能が低い)」数値を記入し、窓の日射取得率(η値)は最大値(冷房期)を記入します。
性能値が出ない
仕様基準は、精緻な計算をして省エネ基準への適合を判定するものではない点にも、注意しましょう。具体的な性能値が必要な制度や申請への利用には、制約がかかります。
よくある質問
Q. BELSを取得すれば省エネ適判を省略できますか
A.できません。BELSの評価書は省エネ性能の表示制度に基づくもので、適判の省略要件には該当しません。省略を狙う場合は、仕様基準等・設計住宅性能評価書・長期優良住宅認定のいずれかによる必要があります。
Q. 200㎡以下の平屋なら省エネ基準に適合しなくてよいのですか
A.適合義務は残ります。都市計画区域等の内で平屋かつ200㎡以下かつ建築士の設計・工事監理による建築物は適合性審査が省略されますが、これは審査の省略であって義務の免除ではありません。
Q. 仕様基準で住宅ローン減税の要件を満たせますか
A.仕様基準ガイドブックには、同基準が住宅ローン減税における省エネ基準適合住宅の基準にも対応する旨が記載されています。ただし減税の要件は税制側で別途定められているため、最新の要件を国税庁および国土交通省の案内で確認してください。
Q. 増改築でも仕様基準は使えますか
A.増改築では、増改築を行う部分について省エネ基準への適合が求められます。既存部分の仕様が不明なケースなど個別性が高いため、早い段階で所管行政庁または申請先の判定機関へ相談することをおすすめします。
建物の省エネ計算は、実績豊富な「環境・省エネルギー計算センター」に相談!
省エネ適判を省略できるのは、外皮性能と一次エネルギー消費性能の両方を仕様基準等で評価した住宅に限られます。片方でも計算に切り替えれば適判ルートに戻り、変更が生じたときは内容より先に「どちらの方向へ動いたか」を確認することが手戻り防止の要になります。判断を前倒しするほど、着工日は守りやすくなります。
省エネ計算における仕様基準は、建築物の省エネ性能が基準に適合するかを簡易に判定できる仕組みです。シンプルでスピーディーに判定できる反面、対象の設備を導入するには大きなコストがかかりやすいという難点があります。
環境・省エネルギー計算センターは、省エネ計算をはじめ、BELSやCASBEE、住宅性能評価など、建築物の省エネに関する総合的なサービスを提供します。
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