住宅省エネキャンペーンは、住宅の省エネ化を推進する国主導の施策です。2050年に迫るカーボンニュートラル達成に向け、国内のエネルギー消費量のおよそ3割を占める建築物分野での省エネ化をさらに進めるべく始まりました。
キャンペーンは国土交通省、経済産業省及び環境省の3省が連携して実施しており、新築住宅と既存住宅の省エネリフォームが対象です。
本記事は、建築会社や設計会社等に向けて、2025年の住宅省エネキャンペーンの対象や条件、補助金内容、申請方法を詳しく解説します。
住宅省エネ2025キャンペーンの概要
住宅省エネ2025キャンペーンの概要を、新築住宅とリフォームとに分けて解説します。
なお、本キャンペーンで補助金を申請するためには、事前に所定の事業者登録を済ませる必要があります。
キャンペーンを利用する可能性がある事業者は、早めに登録を済ませましょう。
事業者登録は、住宅省エネ2025キャンペーンのホームページより進められます。
新築住宅向けの補助金内容
新築住宅は、「子育てグリーン住宅支援事業」「給湯省エネ2025事業」の2つの補助金を利用できます。
子育てグリーン住宅支援事業は、注文住宅の新築・新築分譲住宅の購入・賃貸住宅の新築のいずれも対象ですが、住宅が備えるべき要件が指定されています。
区分 | 対象者 |
注文住宅の新築 | GX志向型住宅:全世帯 長期優良住宅・ZEH水準住宅:子育て世帯 or 若者夫婦世帯 |
新築分譲住宅の購入 | |
賃貸住宅の新築 | グリーン住宅支援事業者と工事請負契約を締結し、賃貸住宅を新築するオーナー |
GX志向型住宅とは、ZEHを大きく上回る水準の性能を備えた住宅です。
詳しくは「【2025最新】GX志向型住宅とは?補助金の内容と申請の流れ、注意点を解説」をご覧ください。
賃貸住宅の新築で補助を受けられるのはオーナーです。
戸建賃貸・集合住宅ともに対象ですが、「新築する」場合のみ補助が受けられます。物件を購入して賃貸オーナーになるケースは対象外です。
給湯・省エネ2025事業は、指定の高効率給湯器を設置する住宅オーナーが対象です。給湯省エネ事業者に登録された事業者により設置されていれば、購入・リース(6年以上)を問われません。
リフォーム向けの補助金内容
住宅省エネキャンペーンでは、住宅のリフォームも補助金対象となります。
補助金名 | 対象者 |
子育てグリーン住宅支援事業 | グリーン住宅支援事業者と工事請負契約等を締結し、リフォーム工事をする住宅オーナー |
給湯省エネ2025事業 | 指定の高効率給湯器を設置する住宅オーナー |
先進的窓リノベ2025事業 | リノベ事業者と工事請負契約を締結し、窓のリフォーム工事をする住宅オーナー |
賃貸集合給湯省エネ2025事業 | 賃貸集合給湯省エネ事業者とリフォーム/リース契約を締結し、補助対象の省エネ型給湯器に交換する賃貸集合住宅オーナー |
給湯省エネ2025事業・先進的窓リノベ2025事業・賃貸集合給湯省エネ2025事業は導入する機器に指定があります。また、事前に事業者登録を済ませた事業者が施工しなければなりません。
対象機器は、住宅省エネキャンペーンのホームページで確認してください。
住宅のリフォームによる、キッチンや浴室の断熱改修も補助対象となります。住宅の省エネ性能を高め、高効率機器に入れ替えるリフォームに対して、補助金が交付されると考えてください。
住宅省エネ2025キャンペーンの補助金額
住宅省エネ2025キャンペーンの補助金額をまとめています。
また、補助金対象か否かを判断するポイントも添えております。
【新築】子育てグリーン住宅支援事業の補助金一覧
新築住宅が利用できる子育てグリーン住宅支援事業の補助金の額は、戸建住宅・賃貸住宅とも同額で、以下の通りです。
対象住宅 | 補助金額(1戸あたり) |
GX志向型住宅 | 160万円 |
長期優良住宅 | 80万円 |
ZEH水準住宅 | 40万円 |
「こどもエコすまい支援事業」(2024年終了)では、子育て世帯の住宅新築に対し、100万円/戸が交付されました。
今回の子育てグリーン住宅支援事業では、省エネ性能の搭載が必須条件となった上、GX志向型住宅以外は補助金額が縮小されます。前制度との違いを正しく踏まえ、顧客への説明に活用してください。
【リフォーム】子育てグリーン住宅支援事業の補助金一覧
子育てグリーン住宅支援事業はリフォームにも利用できます。工事内容を以下にまとめました。補助金は、★工事を2つ以上実施した場合に交付されます。また、☆工事は、★2つ以上を実施していた場合に補助金対象となります。
(必須工事)
★開口部の断熱改修
★躯体の断熱改修
★エコ住宅設備の設置
(任意工事)
☆子育て対応改修
☆防災性向上改修
☆バリアフリー改修
☆空気清浄機能・換気機能付きエアコンの設置
☆リフォーム瑕疵保険等への加入
補助額は以下のとおりで、合計補助額が5万円以上の場合に限ります。
タイプ | 工事内容 | 補助金額上限(1戸あたり) |
S | ★すべてを実施 | 60万円 |
A | ★2つ以上実施 | 40万円 |
【新築・リフォーム】給湯省エネ2025事業の補助金一覧
給湯省エネ2025事業の補助金は、基本額と性能加算額、撤去加算額の3段階で金額が決まります。
<基本額>
設置機器 | 補助金額(1台あたり) | 補助対象上限 |
ヒートポンプ給湯機 | 6万円 | 戸建住宅:いずれか2台まで 共同住宅等:いずれか1台まで |
電気ヒートポンプ・ガス瞬間式併用型給湯機 | 8万円 | |
家庭用燃料電池 | 16万円 |
<性能加算額>
省エネキャンペーンが定める性能ランク(A~C)を満たす機器は、性能に応じて1台あたり4万円〜7万円が加算されます。
<撤去加算額>
電気蓄熱暖房機・電気温水器の撤去工事を同時に実施する場合、4万円〜8万円の撤去補助が受けられます。
【リフォーム】先進的窓リノベ2025事業の補助金一覧
先進的窓リノベ2025事業は、1戸あたり200万円を上限とし、開口部のリフォーム工事費用を補助します。2024年までの事業では上限額150万円でした。今回、50万円の増額となっています。
対象となる工事は、以\下の4種類です。
- ガラス交換
- 内窓設置
- 外窓交換(カバー工法/はつり工法)
- ドア交換(カバー工法/はつり工法)
同じ住宅に複数回工事を行う場合も、都度補助要件を満たせば上限額の範囲内で申請できます。
【リフォーム】賃貸集合給湯省エネ2025事業
賃貸集合給湯省エネ2025事業は、要件を満たす「集合住宅の給湯器入れ替え」が対象です。
<基本額>
設置機器 | 追い焚き機能 | 補助額(1台あたり) | 補助対象上限 |
小型の省エネ型給湯器 (エコジョーズ/エコフィール) |
あり | 5万円 | いずれか1住戸1台まで |
なし | 7万円 |
<加算額>
以下の工事を実施すると、台数に応じて補助金が加算されます。
追い焚き機能 | 工事内容 | 加算額 |
あり | 共用廊下を横断するドレン排水ガイド敷設工事 | 3万円 |
なし | 浴室へのドレン水排水工事 |
なお、賃貸集合給湯省エネ2025事業は、子育てグリーン住宅支援事業と併用できます。
ただし、同一機器に対し両事業から補助を受けることはできません。
また、2024年度に賃貸集合給湯省エネ2024事業の補助金交付を受けた給湯器は、2025年度の補助金は受給できない点に注意してください。
住宅省エネ2025キャンペーンの交付申請方法
住宅省エネキャンペーン2025の交付申請(予約)はすでに始まっています。
補助金交付対象となる期間は、以下の通りです。
補助金名 | 住宅種別 | スケジュール |
子育てグリーン住宅支援事業 | 新築注文住宅 | 2024年11月22日以降に基礎工事より後の工程に着手 遅くとも2025年12月31日までに、一定以上の出来高の工事完了が必要 |
新築分譲住宅 | 予約:予算上限に達するまで(遅くとも2025年11月14日まで) 申請:予算上限に達するまで(遅くとも2025年12月31日まで) 指定の期日までの完了報告が必要 |
|
賃貸住宅の新築リフォーム | 予約:予算上限に達するまで(遅くとも2025年11月14日まで) 申請:予算上限に達するまで(遅くとも2025年12月31日まで) |
|
先進的窓リノベ2025事業 給湯省エネ2025事業 |
2024年11月22日~予算上限に達するまで(遅くとも2025年12月31日まで)の着工が必要 |
補助金交付の手続きは、補助金共通で以下のとおりです。
- 事業者登録を済ませる
- 交付申請予約をし、予算を確保する
- 補助金の交付を申請する
- 補助金の交付が決定し、振り込まれる
申請(予約を含む)の総額が予算に達した時点で受付終了となります。申請可能期間の前から、予約という形で補助金の予算を確保可能なため、早めに予約を進めておくと良いでしょう。予約有効期間は、予約から3か月間/2026年12月31日の、いずれか早い日までです。
予約作業は、2025年11月14日まで可能です。
子育てグリーン住宅支援事業(注文住宅の新築)の交付手続きの図解を下に示します。他の補助金の交付手続きについては、住宅省エネ2025キャンペーンの公式ページでご確認ください。
住宅省エネキャンペーン補助金申請に必要な書類
2025年住宅省エネキャンペーンの補助金申請に必要な書類は、補助金や要件によって異なります。また、様式が変更になる可能性もあるようです。
詳細は、住宅省エネキャンペーンの公式ホームページからチェックができます。抜け漏れのない準備が円滑な申請を実現します。
住宅省エネ2025キャンペーンに関してよくある質問(FAQ)
住宅省エネキャンペーンは政府が肝入りで進める事業です。
制度の規模も大きく、要件も多岐にわたるため、正しい理解が欠かせません。
住宅省エネ2025キャンペーンについて、よくある質問をQ&A形式でまとめました。
Q. 住宅省エネキャンペーンと補助金の違いとは?
A:制度を指すか、お金を指すかが違います
「住宅省エネキャンペーン」は今回の制度の全体を指します。
一方、補助金は交付される“お金”です。
補助金を含めた制度の全体設計がキャンペーンだと考えてください。
また、補助金の申請は建築主や購入者、賃貸オーナーにかわって、施工会社・販売会社が行います。補助金もいったんは施工会社や販売会社に交付されます。
施工会社・販売会社は、交付された補助金をどのように建築主・購入者・賃貸オーナーに還元するか、決めておく必要があります。
Q. 補助金制度の併用は可能?
A:併用可能な補助金と、併用できない補助金があります
補助金の併用可否は以下をご覧ください。
◎ 子育てグリーン住宅支援事業・給湯省エネ2025事業
1つの住宅に対して、国庫から支出される他の補助金との併用は不可
地方自治体の独自財源による補助金は、併用可
◎ 先進的窓リノベ2025事業・賃貸給湯省エネ2025事業
子育てグリーン住宅支援事業と併用可
ただし、同一の開口部・設備が重複して補助を受けることはできない
また、1つの開口部・設備に対して、国庫から支出される他の補助金との併用は不可
地方自治体の独自財源による補助金は、併用可
要件が細かく、判断に困った場合は、管轄の自治体窓口にご相談ください。
Q.ZEHやGX志向型住宅、長期優良住宅と補助金の関係性は?
A:子育てグリーン住宅支援事業にて、扱いが異なります
本年度の住宅省エネキャンペーンでは、GX志向型住宅と長期優良住宅・ZEH水準住宅を区別して扱います。省エネ性能と補助金額を比例させ、高性能住宅の普及を図りたいという政府の狙いがあるためです。
補助金は、GX志向型住宅で160万円/戸と最も高額となり、長期優良住宅が80万円/戸、ZEH水準住宅が40万円/戸です。
顧客が住宅に搭載する性能に迷っていたら、補助金額を示しながら、性能の違いを解説するなど、丁寧な対応を進めると良いでしょう。
まとめ
2025年の住宅省エネキャンペーンは、過去最大規模で実施される見通しです。増額された補助金もあり、省エネ性能の高い住宅をイニシャルコスト少なく手に入れる、またとない機会といって良いでしょう。資材や人件費の高騰により建築コストもかさむ昨今、補助金が売上増大の後押しとなってくれると期待しましょう。
対象条件が変更される可能性もあり、予算に対する充足度や締め切りなどは、住宅省エネキャンペーンの公式ホームページで確認できますので、必ず最新情報の確認を行いましょう。
省エネ計算をはじめ、省エネ適判や住宅性能評価など、手間のかかる業務は外注し、自社のリソースをコア業務に集中させれば、円滑な計画進行が期待できるのではないでしょうか。
累計3,000棟以上の省エネ計算実績、リピート率93.7%、審査機関との質疑応答まで丸ごと外注できる環境・省エネルギー計算センターにぜひご相談ください。
※専門的な内容となりますので、個人の方は設計事務所や施工会社を通してご依頼をお願いいたします。
