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BEIは建築物のエネルギー効率の指標|概要・関連制度や下げる方法を解説

すべての新築建築物に省エネ基準適合が義務化され、建築物の性能面に関心が高まる昨今。高性能建築物の設計で、避けて通れないテーマが今回解説する「BEI」です。

本記事では、BEIの概要から算出方法、関連法案・制度、BEIを下げる方法などを詳しく解説します。BEIを正しく理解し、設計・営業業務に活用してください。

 

BEIとは

はじめにBEIとは何か解説します。

BEIが重視される理由や、具体的な算出方法を確認していきましょう

BEI=建築物のエネルギー効率を評価する指標

令和4年度改正建築物省エネ法の概要|国土交通省

BEIは「Building Energy Index」の略称で、建築物のエネルギー効率を示す指標です。

地球温暖化という喫緊の課題に対し、日本は「2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする」カーボンニュートラルの達成に向け、国を挙げて対策しています。

全体のエネルギー消費の約3割を占める建築分野で省エネが進めば、エネルギー消費量の大きな削減が期待できます。

今後の住宅・建築物の省エネルギー対策のあり方について|国土交通省

建築物の省エネ化推進には、「建築物が十分な省エネ性能を持っているか」「エネルギーを効率良く使えているか」を評価する指標が必要です。この指標こそがBEIです。

BEIは国の省エネ基準を1.0とし、BEI≦1.0で基準達成とみなされます。

BEIの算出方法

BEIは、以下の計算で算出します。

 

BEI=設計一次エネルギー消費量 ÷ 基準一次エネルギー消費量

 

建築物省エネ法に基づく建築物の販売・賃貸時の省エネ性能表⽰制度|国土交通省

◎ 一次エネルギー消費量

建築物が使用するエネルギーの量です。

太陽光発電設備などによる創エネ分を差し引いた実質的な使用量を指します。

◎ 設計一次エネルギー消費量

建築物の設計仕様から算定した一次エネルギー消費量です。

建築物の図面から想定できるエネルギー消費量と考えてください。

◎ 基準一次エネルギー消費量

法令や基準が定める、建築物の最大許容エネルギー消費量です。

基準は設備や地域・用途別に異なります。

一次エネルギー消費量とは

一次エネルギー消費量とは、建築物に設置された設備機器の消費エネルギーを熱量に換算した値です。

“一次”エネルギーは、化石燃料や水力、太陽光など、自然から得られる状態のままのエネルギーを指します。電気やガスは、一次エネルギー消費量を加工・変換したもので、二次エネルギーと呼ばれます。

建築物は二次エネルギーを消費します。ではなぜ、BEIは二次エネルギーで評価しないのでしょうか。理由として二次エネルギーは、一次エネルギーの加工・変換の際に、多少なりともロスが生じるからです。また、二次エネルギーはそれぞれ単位が異なり、比較が容易ではありません。

ロスを含めて建築物が使用するエネルギーを正確に算出するため、そして計算工程をシンプルにするために、BEIでは一次エネルギーが使われます。

 

BEIが関連する法令・制度3つ

BEIは建築物の省エネ性能を測る重要な指標です。

現在、3つの法令・制度でBEIが用いられています。それぞれの内容を簡潔に解説します。

(1) 省エネ基準適合義務

2025年4月より、すべての新築建築物への適合義務化が始まった省エネ基準は、建築物省エネ法が定めています。省エネ基準でのBEI基準は下表のとおりです。

 

建築物の種類・用途 BEI
住宅 住宅 1.0
非住宅 工場等 0.75
非住宅 事務所等・学校等・ホテル等・百貨店等 0.80
非住宅 病院等・飲食店等・集会所等 0.85

 

建築会社や設計士・建築士には、設計建築物が基準を満たす性能を備えられるよう、施主に制度の意義を説明し、同意を得る努力が求められます(建築士の説明努力義務)。

なお、BEIが基準を満たしていないと省エネ適判に不適合となり、確認申請が下りません。

(2) 住宅トップランナー制度

令和4年度改正建築物省エネ法の概要|国土交通省

 

住宅トップランナー制度は、大手住宅事業者に省エネ性能の高い住宅供給の促進を求める制度です。以下の目標に合わせ、基準を満たした住宅の提供を課します。

 

住宅の種類 供給戸数(年あたり BEI 目標年度
建売戸建住宅 150戸 0.85 2020年度
注文戸建住宅 300戸 0.80 2024年度
賃貸アパート 1,000戸 0.90 2024年度
分譲マンション 1,000戸 0.80 2026年度

 

省エネ基準を達成する目標年度以降も継続的な達成が求められます。また、住宅トップランナー制度は事業者に対する努力義務ではありますが、未達の場合はその理由や今後の対応の報告を義務付けています。

(3) BELS(建築物省エネルギー性能表示制度)

建築物省エネ法に基づく建築物の販売・賃貸時の省エネ性能表⽰制度|国土交通省

 

BELSは、建築物の省エネ性能を消費者にわかりやすく伝えるために始まった制度です。

建築物の販売・賃貸業者が性能に応じたラベルを建築物に添付します。

BELSラベルでのBEIは、エネルギー消費性能として視認されやすい「★(星)」の数で示されています。星の数が多いほど、省エネ性能の高い建築物である、という意味になります。

なお、太陽光発電設備を搭載し、創エネを自家消費する建築物には、削減量が「点灯する星」で示されます。また、BELSの省エネ性能評価は、規定の評価機関での評価が必要です。

 

BEIを下げるメリット

BEIは、数値が小さいほど建築物のエネルギー消費効率が上がり、高性能建築物であることを示します。では、BEI削減による具体的なメリットはどのようなものでしょうか。

建築物の光熱費を削減できる

BEIは、建築物が消費するエネルギー量を示します。BEI=0.8の建築物は、基準に対し80%のエネルギーで運用できる、つまり使用エネルギーを20%削減できることを意味します。BEIの値が低いほど建築物が必要とするエネルギー量は少なくて済み、結果的に光熱費の削減につながります。

建築物のオーナーにとって、光熱費の削減は直接的に恩恵を受けられるメリットです。建築会社や販売会社は、建築物のランニングコストを抑えられる点を正しく理解し、競合との差別化やアピールポイントとして活用すると良いでしょう。

補助金を受けられる可能性がある

建築物の省エネ化は、政府が主導する重要施策です。省エネ促進のため、毎年のようにさまざまな補助金が用意されている点も見逃せません。例えば、2025年は「住宅省エネ2025キャンペーン」として、4種類の補助金が提供されます。

住宅省エネ2025キャンペーン

住宅省エネ2025キャンペーンでは、160万円/戸に達する補助金もあります。補助金の活用により、施主の資金力にゆとりが生まれる場合も多いでしょう。

建築会社にとっては、多様な提案やワンランク上の高効率住宅設備を提案できるチャンスとなります。

建築物の資産価値が高まる

地球温暖化やカーボンニュートラルという世界的な課題に対する対策でもあり、省エネ性能の高い建築物は、今後も市場の主役であり続けると考えられます。住宅の省エネ性能に関する消費者の関心も高く、性能の高い建築物は資産価値が上がることも期待できます。

住宅ニーズの多様化を踏まえると、BEIを下げるさまざまな手法を保有する建築会社ほど、提案の幅が広がり、施主をクロージングできる可能性が高まる可能性があります。BEIを下げる具体的な方法は次で解説します。ぜひ、チェックしてみてください。

 

BEIを下げる方法

最後に、建築物のBEIを下げる方法を3つ紹介します。

高効率設備を採用する

家庭のエネルギー消費量は、給湯と暖房、動力・照明だけで全体の85%以上を占めます。エネルギー消費の大きな設備を高効率な製品に入れ替えるだけで、大幅な省エネ効果を期待できるでしょう。以下を参考に、高効率設備の採用を検討してみてください。

  • 空調:最新型のエアコンの導入
  • 換気:全熱交換器の導入
  • 照明:全室LED化

断熱性能・気密性を高める

高効率な住宅設備をいくら導入しても、断熱性と気密性が低ければ、住宅の省エネ化は実現しません。最新型のエアコンで暖められた(冷やされた)室内の空気が、外に逃げ続けてしまうためです。省エネ性能の高い建築物の実現には、建築物の断熱性・気密性向上が不可欠です。

断熱性の基準となるUA値およびηAC値は地域ごとに基準値が定められています。

 

設計建築物が属する地域のUA値を参照し、基準を満たす断熱性能の搭載を目指しましょう。

なお、気密性をあらわすC値には基準はありません。一般的にC値=2.0cm3/m2以下で高気密住宅とされ、HEAT20(ZEH水準を上回る性能)では、C値=0.7cm3/m2ほどが目安とされています。

再生可能エネルギー設備を導入する

太陽光発電システムをはじめとする創エネ設備の搭載もBEI値の低下に有効です。建築物が創エネしたエネルギーは、一次エネルギー消費量から差し引けるためです。

また、創エネ設備があれば、災害等で電力供給が途絶えても自家発電した電力を利用可能です。災害が頻発する現代、リスクへの備えとしても訴求できるポイントとなります。

まとめ

BEIは、設計士や建築士が避けて通れない重要なテーマです。

省エネ性能の高い建築物に対するニーズが高まる昨今、問い合わせ増加も予想されます。

本記事で算出方法やBEIが関連する制度の理解を深め、設計・営業業務に有効活用していきましょう。

 

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