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省エネ適判の対象外建築物の条件とは?適判の概要や申請手順も解説

2025年4月、原則的にすべての新築建築物に対して、省エネ基準への適合義務化が始まりました。省エネ関連の業務量が急激に増え、対応に苦慮する建築会社や現場も多いのではないでしょうか。

省エネ基準への適合可否を判定する「省エネ適判」には、実は対象外となる条件があります。今回は、省エネ適判の対象外条件を詳しく解説します。あわせて、適判の目的や役割、省エネが声高にいわれる理由もまとめました。

省エネ適判をあらためて確認し、設計工程を着実に進行するヒントとして活用してください。

 

省エネ適判の概要

はじめに、省エネ適判とは何か、適判で求められる省エネ基準とは何か、概要を解説します。※2025年6月時点

省エネ適合性判定とは

省エネ適合性判定(省エネ適判)は、建てようとする建築物が、省エネ基準に適合しているかを確かめる手続きです。

適判では、建築物の一次エネルギー消費量(BEI)外皮性能(住宅のみ)が確認されます。

BEIは標準的な仕様の建築物と比較した際、エネルギー消費量をどの程度抑制できているかを示す指標で、以下の計算で求めます。

 

BEI=設計一次エネルギー消費量/基準一次エネルギー消費量

 

外皮性能は、UA値およびηAC値によって評価され、いずれも地域ごとに定められた基準値を下回る必要があります。

適判は、着工前に所管行政庁や登録省エネ判定機関が実施します。

基準に適合していると確認できると適判通知書が交付されます。

省エネ基準とは

省エネ基準適合義務の対象拡大について|国土交通省

適判で求められる省エネ基準は、建築物省エネ法が定めています。2025年4月に、原則すべての新築建築物に対して省エネ基準適合が義務化されました。

省エネ基準は、一次エネルギー消費量基準と外皮基準の2要素から成ります。

一次エネルギー消費量(BEI)基準はBEI≦1.0です。

(2,000㎡以上の大規模非住宅の場合は用途に応じてBEI≦0.75~0.85)

外皮性能基準は、住宅のみ求められ、地域別に定められたUA値とηAC値で構成されます。UA値は沖縄を除く全国に基準が設定されており、0.46(北海道)〜0.87(九州)の値を取ります。

ηAC値は東北以南の地域に定められており、3.0(東日本)〜6.7(沖縄)となっています。いずれも設計値が基準値以下になるよう求められます。

一部、省エネ基準適合義務対象外の建築物もありますが(後述)、実質的にはほとんどすべての新築建築物が義務化に対応しなければなりません。

省エネ基準適合義務の対象拡大について|国土交通省

なお、増改築では、増改築を実施する部分のみに省エネ基準適合が求められます。

 

省エネ適判の対象外建築物

ここからは、省エネ適判の対象外となる建築物5種類を具体的に解説します。

1. 省エネ基準の適用対象外の建築物

はじめに、省エネ基準が適用されない建築物がある点を押さえましょう。

そもそも省エネ基準に適合しなくても良いため、適判も不要になります。

省エネ基準の適用対象外となる建築物は、以下のとおりです。

  • 床面積が10m2以下の建築物(延床面積-開放部分≦10m2 も可)
  • 居室がない、または高い開放性を有することにより、空調設備が不要な建築物
  • 建築基準法の定めを満たした仮設住宅、プレハブモデルルームなど

居室がなく、高い開放性があるために空調設備が不要な建築物は、観覧場やスケート場、水泳場、スポーツの練習場、神社、寺院などを想定してください。

2. 審査が容易な住宅

適合性判定の手続き・審査の合理化について|国土交通省

 

仕様基準を用いて設計された住宅も、省エネ適判の対象外となります。

省エネ基準適合義務の対象建築物の拡大により、手続きの増大に対処する措置と考えてください。なお、適判は不要でも、建築確認・検査は必要です。

仕様基準とは、省エネ基準を定める一次エネルギー消費量と外皮性能の規定値と、設計値とを照らし合わせて、省エネ基準適合を判断するやり方です。規定値が省エネ基準を満たしているため、チェックした入力値との照合で、基準達成か否かを判断できる、という考え方です。

仕様基準は地域区分別・建築物の構造別に定められています。

国土交通省の省エネ法に関するページから「資料ライブラリー」をご覧ください。

3. 平屋かつ200m2以下の建築物

適合性判定の手続き・審査の合理化について|国土交通省

延床面積200m2以下の平屋で、以下の条件を満たした場合は省エネ適判の対象外となります。

  • 都市計画区域内、準都市計画区域内の建築物
  • 建築士が設計と工事管理を行う

なお、都市計画区域外、都市計画区域外の建築物であれば、適判に加えて建築確認・検査も不要となります。

ただし、適判の対象外であっても省エネ基準の適合義務はありますので、注意が必要です。

4.設計性能評価書を取得している建築物

設計性能評価書は、設計段階での性能評価をまとめた書面です。国土交通省に登録済みの第三者機関からの評価が必要で、設計性能評価書を持つ住宅は一定以上の性能基準を満たしている、とみなされます。

設計性能評価書を提出し省エネ適判対象外となるには、以下の性能を満たす必要があります。

  • 断熱性能等級4
  • 一次エネルギー消費量等級4以上

上記の性能は、すなわち省エネ基準です。設計性能評価書の提出により省エネ性能を満たしていると証明できるため、適判が不要になります。

5. 長期優良住宅認定書を提出できる建築物

長期優良住宅認定制度概要パンフレット(新築版)|国土交通省

長期優良住宅とは、3世代程度の長期間に渡って、良好な状態で住み続けられる措置が施された高品質な住宅に与えられる認定です。長期優良住宅の認定には登録住宅性能評価機関による確認と適合証の交付、さらに所轄行政庁への申請が必要です。

長期優良住宅の認定条件の1つに「省エネ性能」があり、断熱等性能等級5と一次エネルギー消費量等級6を満たさなければならないとされています。長期優良住宅の基準が省エネ基準より高いため、長期優良住宅の認定を受けた建築物は省エネ適判を省略できます。

 

省エネ適判の申請手順

省エネ適判を申請する手順も確認しておきましょう。

省エネ適判の依頼先は登録省エネ判定機関

省エネ基準への適合性を判定できる期間は、登録省エネ判定機関に限られます。登録省エネ判定機関は、国土交通省や所轄行政庁に登録済みの民間機関です。

依頼できる期間は、建築物の建設地によって異なります。一般社団法人住宅性能評価・表示協会のホームページで検索してみてください。

省エネ適判の必要書類

省エネ適判の申請提出書類は、以下のとおりです。

<主な書類>

  • 計画書、変更書など
  • 添付図書
  • 委任状兼同意書
  • 連絡票

添付図書は、住宅・非住宅によって若干の違いがあります。

<添付図書>

  • 設計内容説明書
  • 付近見取図
  • 配置図
  • 仕様書
  • 各階平面図
  • 床面積求積図
  • 用途別床面積表
  • 立面図
  • 断面図、矩計図
  • 各部詳細図
  • 各種計算書
  • 機器表

※昇降機仕様書

※系統図

※制御図

※は非住宅のみ必要な図書です。

省エネ適合性判定とは|一般社団法人住宅性能評価・表示協会

適判は、建築確認手続きの中で行われます。適判が完了しなければ確認済証が交付されず、工事に着手できません。スケジュール通りに工事を進めるためにも、必要な書類を確実に準備しておくようにしましょう。

省エネ適判の計算方法

省エネ基準の概要|国土交通省

省エネ適判は、一次エネルギー消費量(BEI)の数値で適合可否を判定します。空調(冷房)および換気、照明、給湯、昇降機(非住宅のみ)のエネルギー使用量について、基準より設計値のほうが下回っていれば適判が下ります。

なお、設計値では高効率設備の導入によるエネルギー削減も考慮できます。

適判を通過するためには、住宅・非住宅ともにBEI≦1.0となる必要があります。

省エネ適判の申請手続き

適合性判定の手続き・審査の合理化について|国土交通省

省エネ適判の手続きの流れは、以下のとおりです。

  1. 建築主が、建築確認申請を指定確認検査機関に提出
  2. 建築主が、省エネ性能確保計画を所轄行政庁・登録省エネ判定機関に提出
  3. 所轄行政庁・登録省エネ判定機関が適合性を判定
  4. 所轄行政庁・登録省エネ判定機関から適合判定通知書が交付
  5. 建築確認済証が交付される

なお、工事完了の際にも、実際の建築物が省エネ基準に適合しているか検査されます。

適合性判定の手続き・審査の合理化について|国土交通省

適判が不要な建築物は、建築確認申請の後に省エネ基準を含めて適合が判定され、確認済み証が交付されます。

 

省エネ基準適合が声高にいわれる背景

省エネ適判対象外の建築物はかなり限定的です。

大半の建築物に省エネ基準への適合を求める理由は何でしょうか。

現在、日本は2050年のカーボンニュートラル達成に向け国を挙げて努力しています。建築物分野は国内のエネルギー消費の約3割を占めるともいわれ、省エネ対策が喫緊の課題とされてきました。

実は、省エネ基準への適合義務化とともに、より高水準の省エネ性能への誘導施策や、省エネ化改修の支援、再エネ設備の導入促進策なども実施されています。

省エネ基準適合義務化と適判対象の拡大はこうした背景から生まれました。省エネは建築業界が協働し達成しなければならない課題であると考え、正しい理解と確実な設計・施工を心がけましょう。

 

まとめ

省エネ適判は、建築物が省エネ基準に適合しているかを確認する手続きです。2025年4月からはじまった省エネ適合義務化により、ほとんどすべての建築物が適判の対象となりました。対象外建築物は「高い開放性を持つ」「面積が10m2以下である」「仕様基準によって設計されている」など、ごく限られた条件を満たすものだけです。

待ったなしの地球温暖化対策のために、建築物の省エネ化は重要なテーマです。

手続き一つひとつの目的を理解し、省エネ性能の高い建築物普及に努めてください。

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