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「省エネ適判」と「省エネ届出」の違いは?迫る法改正の内容も解説

省エネ適判と届出は、必要な手続きや業務の手間が大きく違います。

そのため、初めて省エネ適判を行う場合、届出と同じ感覚で取り組むと、思わぬ落とし穴にはまる恐れがあります。

今回は、省エネ届出と省エネ適判の違いや、省エネ適判の流れや注意点を解説します。

省エネに関する法改正の内容を正しく理解し、設計業務を円滑に進めるヒントにしてください。

 

「省エネ適判」と「省エネ届出」は何が違う?

まず、省エネ適判と省エネ届出の違いを、端的に解説します。

双方の違いに注目し、ポイントを押さえてください。

省エネ適判とは

省エネ適判(省エネ適合性判定)は、省エネ基準の適合対象である建築物が受けなければいけない審査です。省エネ基準に適合しているかの審査であり、「建築物省エネ法」という法律が詳細を定めています。

2025年3月までの現行制度では、省エネ適判の対象建築物は300m2以上の非住宅建築物です。

省エネ届出とは

省エネ届出は、建築主が所管行政庁に「届出に係る省エネ計画」を提出する手続きです。

省エネ計画書は、建築物の省エネ計算を含みます。

現行制度で、省エネ届出が課されている建築物は300m2以上の住宅建築物です。

ちなみに、大半の戸建住宅が含まれる小規模建築物には、今のところ省エネ適判・省エネ届出とも課されていません。「説明義務」という、建築士による建築主への省エネ性能に関して説明が義務付けられています。

2025年4月の建築物省エネ法改正のポイント4つ

建築物省エネ法は、段階的な改正を経て、徐々に対象を広げています。直近では、2021年度に、省エネ適判の対象が中規模非住宅に拡大されました。

そして、2025年4月にさらなる改正が行われます。

改正される建築物省エネ法の内容について、省エネ適判と省エネ届出に関わるポイントを3つ解説します。

1. 省エネ基準適合が拡大される

最も大きなポイントは、省エネ基準への適合義務化が「原則としてすべての新築建築物」に拡大される点です。

これまで、省エネ基準への適合義務は、大規模・中規模の非住宅に限られていました。しかし、2025年4月以降に着工する建築物は、規模を問わず省エネ基準への適合が求められます。

2025年4月 建築物省エネ法改正に関するリーフレット|国土交通省

2. 省エネ基準適合の拡大により、届出義務が廃止される

これまで大規模・中規模住宅に課されていた省エネ届出義務は、2025年3月31日で廃止されます。原則としてすべての新築建築物が、省エネ基準への適合を義務付けられるためです。2025年4月以降、省エネに関する申請や届出は、省エネ適判に一本化されます。

3. すべての新築建築物に省エネ適判が必要になる

すべての新築建築物に省エネ基準適合義務が課されることにより、省エネ適判も全新築建築物で必要に必要になります。集合住宅やマンションをはじめ、これまで説明義務に留まっていた戸建住宅までもが省エネ適判対象となり、建築業界全体で省エネ関連業務量の激増が予想されます。

一部、省エネ適判が不要な建築物も設定される

省エネ適判の対象件数が激増し、申請側・審査側双方にとって過大な負担増となることは、誰もが想像できる事態です。そのため、審査の簡素・合理化が進められています。

【建築物省エネ法第11・12条】 適合性判定の手続き・審査の合理化について|国土交通省

 

まず、省エネ適判が不要な建築物が定められました。

建築確認の対象外の建築物と、建築基準法で審査・検査省略対象とされる建築物は、省エネ適判が不要です。

また、都市計画区域・準都市計画区域に建てられる平屋200m2以下の建築物など、省エネ適判が容易と考えられる建築物の手続きも、省略されます。

新基準が適用される建築物

ここまで解説してきた法改正の影響を受ける建築物は、2025年4月以降に「着工」するものが対象です。2025年3月31日までに着工した建築物は、現行制度の対象となります。

着工が新年度に1日でもずれ込むと、新制度の影響を受けることを押さえておきましょう。

省エネ適判 申請の流れ

これまで、省エネ届出や説明義務だけを行ってきた方々にとって、省エネ適判は分からないことが多いのではないでしょうか。

ここからは、省エネ適判を申請する流れを、簡潔に解説します。

省エネ適判に必要な書類

省エネ適判の審査に際し、準備しなければならない書類は、以下の通りです。

  • 次のいずれかの書類
    • 計画書
    • 通知書(計画通知物件の場合)
  • 添付図書
    • 設計内容説明書
    • 付近見取図
    • 配置図
    • 仕様書
    • 各階平面図
    • 床面積求積図
    • 用途別床面積表
    • 立面図
    • 断面図または矩計図
    • 各部詳細図
    • 各種計算書 など
  • 委任状兼同意書
  • 連絡用書類

以上が、共通して必要な書類です。

その他、地域や判定機関によって、追加書類が求められる場合があります。

省エネ適判の申請の流れ

省エネ適判の流れは、下図の通りです。

 

【建築物省エネ法第11・12条】 適合性判定の手続き・審査の合理化について|国土交通省

 

申請は、5つのステップに分かれます。

段階 内容 誰から 誰に
1 建築確認申請 建築主 建築主事/指定確認検査機関
2 省エネ適判の資料提出 建築主 所管行政庁/登録省エネ判定機関
3 省エネ適判通知書の交付 所管行政庁/登録省エネ判定機関 建築主
4 省エネ適判通知書等の提出 建築主 建築主事/指定確認検査機関
5 確認済証の交付 所管行政庁/登録省エネ判定機関 建築主

 

注意したいのは、省エネ適判「適合性判定通知書」の交付がなければ、確認済証が交付されない点です。省エネ適判と建築確認を、同時進行する必要があるということです。

完了検査時にも、省エネ適判に提出した計画書の再検査が必要です。このとき、当初計画から変更がなければ、検査が続行されますが、計画変更・軽微な変更がある場合は、改めて手続きが必要となります。

省エネ適判の審査にかかる期間

省エネ適判では、様々な書類が行き来します。手順がただでさえ複雑である上に、審査対象の書類が多岐に渡るため、審査には時間がかかります。

省エネ適判にかかる期間は、公式には申請書の受理から原則14日以内とされています。

※参照:建築物省エネ法 Q&A集~令和元年改正反映版~|国土交通省(P4-Q18)

登録省エネ判定機関とは

登録省エネ判定機関とは、省エネ適判の実施者として国土交通大臣又は地方整備局長などから登録を受けた、民間機関です。登録省エネ判定機関は、一般社団法人住宅性能評価・表示協会のホームページで検索できます。

省エネ基準に適合しない場合

省エネ適判の結果、省エネ基準を満たさないとされた建築物は確認済証が交付されず、着工できません。計画を修正し、改めて省エネ適判を申請してください。

計画に変更が生じた場合

以下のような変更は、省エネ適判の変更計画書を提出し、省エネ適判判定通知書を受理する必要があります。

  • 建築基準法上の用途の変更
  • モデル建物法で用いたモデル建物の変更
  • 計算方法の変更 など

 

省エネ届出が省エネ適判になるとどうなるか

省エネ届出が省エネ適判に変更されると、どのような影響が起きるでしょうか。

どの会社にも共通する課題を、2つ解説します。

建築コストが上昇する

まず、建築物を省エネ基準に適合させるために、追加のコストがかかると考えられます。

以下は、省エネ基準に適合した建築物に必要な追加コストの試算例です。

省エネ基準への適合のための追加コスト等の試算例について(住宅)|国土交通省

 

2025年4月以降、省エネ適判の対象となる大規模・中規模住宅では建築費の約1.3〜1.5%、小規模住宅では約4%ものコスト増が想定されます。

申請に時間とコストがかかる

今後は届出の提出ではなく、「審査」が必要になります。

申請に時間がかかる点は、押さえておく必要があるでしょう。

さらに、軽微な変更であっても、再審査には費用がかかります。

軽微変更(ルートA~C)のうち、大半の軽微変更が該当するルートCでは、再審査手数料が数十万円単位で必要です。

また、再検査は省エネ計算に1〜2週間、審査に3〜4週間かかります。

再検査によって、着工が当初の計画から1か月延びる場合もあるということです。

 

業務効率化を進め、2025年3月までの着工を目指そう

省エネ適判は、省エネ届出とは内容も手続きも、大きく変化します。

建築コストの増大という社会的背景を踏まえながら、建築主の理解を得、省エネ基準に適合する設計を心がけなければなりません。

現在、省エネ届出の上で計画が進行中の建築物も、着工が2025年4月にずれ込むと、省エネ適判対象となる点にも注意しましょう。

 

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