近年、新築住宅の建築や既存住宅のリフォームで補助金制度等を利用する場合、省エネ性能の高さが条件になっているケースがほとんどです。
そのため補助金等の申請には、省エネ住宅であることを証明する書類の提出が必要です。
この記事では省エネ住宅を証明する証明書の種類や、代表的な証明書である住宅省エネルギー証明書の取得方法について解説します。
省エネ住宅の証明書とは
2025年度よりすべての新築住宅・建築物で省エネ基準への適合が義務付けられるなど、国内で住宅の省エネ性能を向上させるための制度づくりが進められています。
省エネ住宅普及の目的は、住宅で消費するエネルギーを削減し、人にも環境にも配慮した持続可能な社会づくりの実現です。
2025年度に設けられた住宅の新築・増改築時に使える補助金制度は、省エネ住宅の初期コストを抑えるのを目的とした制度が基本になっています。
その補助金制度等を利用するために必要なのが、省エネ住宅であることを証明する証明書です。
住宅の省エネ性能を証明する書類
住宅の省エネ性能を証明する書類は複数存在するため、どれを選ぶべきか悩む方も多いでしょう。
そこで国内で住宅の省エネ性能を証明するのによく利用される証明書を3つ解説します。
住宅省エネルギー証明書
住宅省エネルギー証明書とは、建築物省エネルギー法で定められた省エネ基準に適合した住宅だと証明する証明書です。
前述したとおり、2025年度以降新築する住宅は省エネ基準に適合しているのが必須条件ですが、それを証明する書類は自動で発行されません。
住宅の省エネ性能を証明したい場合は、住宅省エネルギー証明書を発行する必要があります。
住宅省エネルギー証明書で判定される項目は、次の2点です。
- 外皮性能
- 一次エネルギー消費量
ZEH水準を満たしている場合は「ZEH水準住宅」、ZEH水準未満で省エネ基準を満たしている場合は「省エネ基準適合住宅」と記載されます。
BELS評価書
BELS(建築物省エネルギー性能表示制度)とは、建築物の省エネ性能の評価や表示を公正かつ的確に行うことを目的にした第三者評価です。
自己評価も可能ですが、評価の信頼性を高めるために第三者評価が望ましいです。
第三者評価を受けた場合、下記のようなラベルの提示が可能になります。
引用:一般社団法人住宅性能評価・表示協会「建築物省エネ法に基づく省エネ性能ラベル」
下記のような評価書も発行され、消費者に住宅の省エネ性能をより詳しく提示できます。
引用:国土交通省「建築物の省エネ性能表示制度」
申請には住宅省エネルギー証明書よりも手間がかかりますが、住宅の性能を消費者にわかりやすく証明できるのが魅力です。
また「ZEH水準住宅」ではなく「ZEH住宅」を証明するには、BELS評価が必要です。
住宅性能評価書
住宅性能評価書とは、良質な住宅を安心して取得できる市場の形成を目的に、住宅のさまざまな性能を消費者にわかりやすく表示するための評価書です。
住宅性能評価書には「設計住宅性能評価書」と「建設住宅性能評価書」の2つがあり、それぞれ評価段階が異なります。
マーク | 特徴 | |
設計住宅性能評価書 | ![]() |
設計図書段階の評価結果をまとめたもの |
建設住宅性能評価書 | ![]() |
施工段階と完成段階の検査を経た評価結果をまとめたもの |
引用:一般社団法人住宅性能評価・表示協会「新築住宅の住宅性能表示制度かんたんガイド」
住宅性能評価は省エネ性だけでなく、耐震性や維持管理対策、劣化対策などさまざまな視点から住宅を評価するので、住宅の品質を保証したい場合に選ばれている評価です。
そのため住宅瑕疵保険や長期優良住宅など、省エネ性能以外の性能に対する条件もある認定の手続きを簡素化するのにも利用できます。
住宅省エネルギー証明書の取得方法
ここからは住宅の省エネ性能を証明するのが比較的容易である、住宅省エネルギー証明書の取得方法を解説します。
証明書を取得できる建築物の条件
証明書は、新築・既存住宅どちらも取得できます。
ただし、既存住宅は、該当する住宅を取得する日の前から2年以内、または取得した日から6ヵ月以内に証明のための調査が終了しているなど、新築住宅よりも条件が複雑です。
参照:国土交通省
証明書の発行者
証明書が発行できるのは次の4者です。
- 建築士法第23条の3第1項の規定による登録を受けた建築士事務所に属する建築士
- 建築基準法第77条21第1項に規定する指定確認検査機関
- 住宅品質確保法第5条第1項に規定する登録住宅性能評価機関
- 特定住宅瑕疵担保責任の確保等に関する法律第17条第1項の規定に規定する住宅瑕疵担保責任保険法人
条件を満たせば、住宅の設計を行った建築士自らが発行できる点が特徴です。
申請の必要書類
建築士等が新築住宅の証明書を発行する場合、必要な書類は次のとおりです。
- 住宅省エネルギー性能証明申請書
- 設計図書
- 工事監理報告書(所持している場合)
- 検査済証
- 補助事業関係書類(補助事業等を利用する場合)
- 第三者評価書(BELS評価書などを所持している場合)
登録住宅性能評価機関など第三者機関に依頼する場合、機関ごとに必要書類が異なるので、申請時に確認しましょう。
建築士が証明書を発行する場合の流れ
建築士が新築住宅の証明書を発行する場合の流れは次の3ステップです。
- 省エネ基準やZEH水準を満たすための省エネ計算や設計を行う
- 工事完了後に現地調査を行う(取得の前日までに済ませる)
- 国土交通省の公式サイトから書式をダウンロードし、必要事項を記入する
第三者機関に依頼しないため手間やコストが省けますが、建築士の責任が非常に大きくなります。
審査機関に証明書の発行を依頼する場合の流れ
指定確認検査機関など第三者機関に、新築住宅の証明書の発行を依頼する基本的な流れは、次のステップとなります。
- 省エネ基準やZEH水準を満たすための省エネ計算や設計を行う
- 工事完了後に現地調査を行う(取得の前日までに済ませる)
- 国土交通省の公式サイトから書式をダウンロードし、必要事項を記入する
- 申請書類を審査機関に提出する
- 決済後、評価書が発行される
建築士が自ら発行するよりも時間やコストがかかりますが、主観での評価よりも信頼性が高いのが魅力です。
住宅省エネルギー証明書の使用用途
住宅省エネルギー証明書が活躍する主な場面を2つ解説します。
確定申告で住宅ローン控除を受ける
2024年1月より、住宅ローン控除を受けるには省エネ基準以上の省エネ性能が必須となりました。
それに伴い、確定申告で住宅ローン控除を受けるには下記いずれかの証明書が必要です。
- 住宅省エネルギー証明書
- 建設住宅性能評価書
建設住宅性能評価書を発行できるのは登録住宅性能評価機関のみです。
手軽さを求めるなら、建築士が発行できる住宅省エネルギー証明書が適しているでしょう。
住宅ローン控除の借入限度額は、住宅の省エネ性能の高さで異なります。
引用:国土交通省「住宅ローン減税改正3つのポイント」
住宅省エネルギー証明書で証明できるのは、省エネ基準適合住宅とZEH水準住宅なので、長期優良住宅を証明したい場合は建設住宅性能評価書を取得しましょう。
贈与税の非課税限度額を拡大する
父母や祖父母などから住宅取得資金の贈与を受けた場合、省エネ性能などが高い「質の高い住宅」であれば、最大1,000万円まで贈与税が非課税になる特例措置があります。
質の高い住宅の要件は、次のとおりです。
引用:国土交通省「住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置」
上記の要件の中から、ひとつ以上該当する必要があります。
住宅省エネルギー証明書は「断熱等性能等級5以上かつ一次エネルギー消費量等級6以上」を証明できるため、証明書類として活用可能です。
住宅省エネルギー証明書でよくある質問4選
ここからは、住宅省エネルギー証明書でよくある質問を4つ解説します。
住宅省エネルギー証明書はあとから発行できる?
住宅省エネルギー証明書は住宅の完成後に発行も可能です。
ただし、既存住宅になってしまうと、該当する住宅を取得する日の前から2年以内、または取得した日から6ヵ月以内に証明のための調査が終了しているなど複雑な条件があるため、新築の場合は引渡し前に発行しておくのが無難です。
住宅省エネルギー証明書はどこでもらえる?
住宅省エネルギー証明書を建築士または第三者機関が発行しない場合、指定確認検査機関などで発行が可能です。
登録住宅性能評価機関は、国土交通省の公式サイト「住宅税制に関する各種証明書の発行業務を行っている登録住宅性能評価機関について」で確認できます(随時更新)
住宅省エネルギー証明書の発行にかかる費用は?
住宅省エネルギー証明書の発行にかかる費用は、依頼する第三者機関によって異なります。
国土交通省の公式サイトに記載されている、登録住宅性能評価機関5社で新築一戸建ての証明書を発行する際の費用をまとめました。
費用(税込) | |
株式会社GAI建築確認 | 44,000円~ |
株式会社湘南建築センター | 22,000円~ |
株式会社確認サービス | 22,000円~ |
株式会社CI東海 | 48,000円~ |
ビューローベリタスジャパン株式会社 | 66,000円~ |
※上記は各機関が公表している料金の一例です。費用は建物の規模や評価内容によって変動するため、正確な金額は必ず各機関へ直接お問い合わせください。
建築士自らが証明を発行する場合、手数料がかからないため低コストといえます。
住宅省エネルギー証明書の書き方や見本は?
引用:国土交通省「住宅省エネルギー性能証明書・様式記載例」
住宅省エネルギー証明書の記入例は、国土交通省公式サイトで確認できます。
証明書も同じページからダウンロード可能です。
まとめ
省エネ住宅で補助金制度や住宅ローン控除を利用する場合、住宅省エネルギー証明書など住宅の省エネ性能を証明できる書類が必要です。
住宅省エネルギー証明書の発行は建築士でも可能ですが、専門知識が必要なので本記事を参考に理解を深めていきましょう。
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