新築建築物の施工や既存建築物の増改築を行う際、国が定める建築基準法を満たしているか「建築確認申請」を受ける必要があります。
しかし建築物の条件によっては建築確認の対象外となり、申請の手間やコストを省けるのをご存じですか。
この記事では建築確認申請が不要になるケースや、申請を怠った場合のペナルティについて解説します。
4号特例廃止による改正点も解説するので、建築確認申請の対象か確認する際の参考にしてください。
建築確認申請とは
建築確認申請とは、新しく建築物を施工する際や一定規模以上の増改築を行う際、建築基準法および関係法令に適合しているかを確認する制度です。
建築基準法は、建築物を使用する人やその周囲の人の安全性を確保するために最低限の基準を定めた法律で、建築物の建ぺい率や容積率、耐久性など住宅の安全性を確立するために必要な性能が細かく決められています。
建築確認申請が必要な建築物
原則的に、建築確認申請はすべての建築物が対象です。
ただし10㎡以下の増改築など、条件を満たすと確認申請が不要になる場合があります。
不要になる詳しい条件は、後述します。
建築確認申請の流れと必要書類
建築確認申請から完了検査までの流れは、次のとおりです。
- 建築計画の作成
- 指定確認検査機関等へ建築確認申請
- 事前審査(確認済証の交付)
- 工事着工
- 検査機関等へ中間検査申請(自治体が指定した一部の建築物のみ)
- 中間検査(中間検査合格証の交付)
- 完成
- 検査機関等へ完了検査申請
- 完了検査(検査済証の交付)
- 引き渡し
基本的に確認検査は事前審査と完了検査の2回で、自治体が指定する条件に当てはまる場合は中間検査も必要です。
事前審査は書類のみ、完了検査は担当者による現地確認が行われます。
建築確認申請の費用の相場
確認申請の費用は、申請する自治体によって異なります。
例えば東京都や神奈川県に建築確認を申請する場合の費用は、次のとおりです。
自治体 | 東京都 | 神奈川県 |
検査費用 | 確認審査申請 | 完了検査申請 | 確認検査申請 | 完了検査申請 |
30㎡以内 | 6,900円 | 12,000円 | 15,000円 | 24,000円 |
30㎡以上100㎡以内 | 13,000円 | 16,000円 | 28,000円 | 29,000円 |
100㎡以上200㎡以内 | 21,000円 | 23,000円 | 43,000円 | 38,000円 |
200㎡以上500㎡以内 | 25,000円 | 29,000円 | 48,000円~55,000円 | 42,000円~49,000円 |
500㎡以上1,000㎡以内 | 35,000円 | 36,000円 | 66,000円 | 55,000円 |
引用:東京都「建築基準法関係申請手数料」神奈川県「建築確認申請等の手数料について」
※料金は申請する自治体や民間の指定確認検査機関によって大きく異なります。上記は一例です。
あらかじめ費用を確認したい場合は、申請予定の地方自治体の公式サイト等をチェックしましょう。
2025年4月1日から4号特例廃止で建築確認申請の対象が拡大へ
行政が掲げる「2050年カーボンニュートラル実現」に向け、建築業界でも2025年4月から、すべての建築物で省エネ基準への適合が義務化されました。
これに伴い、建築基準法第6条に基づいて審査省略制度が措置されていた「4号特例」が見直され、建築確認申請の対象が増加しました。
まず4号建築物が廃止され、新2号建築物、新3号建築物が設定されます。
引用:国土交通省「「4号特例」見直し3つのポイント」
新2号建築物はすべての地域が対象で、新3号建築物は都市計画区域内が対象です。
また4号特例では屋根や外壁の防火性や居室の採光・換気など、審査対象外の項目がありましたが、新2号建築物ではすべての審査項目が対象になります。
4号特例の縮小・廃止により、今まで確認審査が省略されていた建築物の多くが審査の対象になったといえるでしょう。
建築確認申請が不要になる7つのケース
前述したとおり、建築物の中には確認申請が不要となるケースもあります。
ここでは、確認申請を省略できる7つの条件を詳しく解説します。
建築基準法の建築物に該当しない小屋や物置
建築基準法上の“建築物”に該当しないものは、確認申請の対象外となります。
建築基準法第二条では、建築物を「土地に定着する工作物のうち、屋根および柱または壁を有するもの」と定義しています。
つまり土地に定着していないものは、建築物だと判断されない可能性が高いです。
さらに国土交通省は、下記の条件を満たしたものも申請が不要と提示しています。
- 床面積10㎡以下
- 防火地域または準防火地域外
- 外部から物を出し入れでき、内部に人が立ち入らない
ただし長期間設置されているものや移動に手間がかかる規模のものは、建築物と判断されて申請が必要になるケースもあります。
文化財保護法に指定されている建築物
建築基準法第3条の文化財保護法の規定により、重要文化財等に指定された建築物は、建築基準法の適用を受けません。
文化財として認められる歴史的・文化的価値の高い建築物は、修繕や改築が他の建築物と異なるからです。
災害復旧などに利用する仮設建築物
次の条件に当てはまる仮設建築物は、確認申請対象になりません。
- 災害で破損し、応急的な修繕を施した建築物
- 災害発生時に、国や地方公共団体等が災害支援のために建築する床面積30㎡以内の建築物
- 災害時に公益上必要な用途に使用する応急仮設建築物
- 工事現場に設ける小屋や事務所、資材置き場
なお3ヵ月を超えて使用する際は、仮設許可の取得が必要です。
都市計画区域外の新3号建築物
以前は都市計画区域外に建築した4号建築物は確認申請が不要でした。
しかし2025年4月より4号建築物は廃止され、新2号建築物と新3号建築物が新設されました。
それに伴い新2号建築物は確認申請の対象となり、新3号建築物で都市計画地域外の場合、確認申請が不要になります。
例として、新3号建築物には延床面積200㎡以下の木造平屋建て建築物などがあります。
床面積10㎡以下の増築・改築・移転
既存住宅の増改築や移転を行う際、床面積10㎡以下なら確認申請の対象外です。
ただし、防火地域または準防火地域に該当する場合は、火災時のリスクを減らすために床面積10㎡以下でも申請が求められます。
床面積200㎡以下の建築物の特殊建築物へ用途変更
床面積200㎡以下の建築物を特殊建築物へ用途変更する場合、下記2つの条件を満たせば確認申請を省けます。
- 既存建築物の構造や設備が、用途変更後も建築基準法に適合する
- 用途変更後の特殊建築物が建築基準法で定められた用途に該当する
特殊建築物は様々な人が利用する建築物や、消防法で設定されている防火対象物などで、具体的には下記のような建築物です。
- 病院
- 百貨店
- 旅館、ホテル
- 体育館
- 共同住宅
- 展示場
- 火葬場 など
建築基準法や消防法などへの適合が求められるため、必要に応じて自治体の建築部局や消防部局へ相談するのが安心です。
なお、住宅を事務所に変更するなど、特殊建築物以外への用途変更も申請が不要です。
既存建築物の減築
基本的に既存建築物の床面積を減築する場合、確認申請は必要ありません。
しかし、2階建ての建築物の2階部分を減築するなど、屋根の大規模な修繕等が発生する場合は確認申請が求められます。
また、減築と同時に10㎡を超える増築をした場合、確認申請が必要です。
建築確認申請でよくある質問4選
ここでは建築確認申請でよくある質問を4つ解説します。
建築確認申請をしないとどうなる?
確認申請が必要な建築物で申請せずに建築すると、違法建築物になるため注意が必要です。
違法建築が発覚した場合、下記のペナルティを受ける恐れがあります。
- 建築物の安全性が保証されない
- 是正措置命令や建築物の撤去命令
- 建築主や建築会社への刑事罰
- 金融機関からの融資が受けられない
- 資産価値の低下
- 建築会社や施工業者の信頼失墜
建築物を使用する人や周囲の住民の安全性を確保するためにも、確認検査が必要な建築物では必ず申請を行いましょう。
建築確認申請は自分でできる?
確認申請は建築基準法により、建築主が提出するように定められています。
そのため建築会社等を通さず、建築主自ら申請することも可能です。
ただし申請に必要な書類や図書の作成には、建築に関する専門知識が必須です。
スムーズに申請を進めるためにも、建築物を施工する会社や業者に依頼するのが無難でしょう。
ガレージや車庫は建築確認申請が必要?
ガレージや車庫は、土地に基礎や柱を設置する固定式の場合、建築物とみなされるため建築確認申請が必要です。
土地に定着するカーポートや車庫は、壁の有無にかかわらず建築物に該当するため、原則として建築確認申請が必要です。
防火・準防火地域外での10㎡以内の増築であれば申請は不要です。
ただし、新築の場合は面積にかかわらず申請が必要になるケースがほとんどです。
ログハウスの建築確認申請を不要にするには?
ログハウスもガレージ同様、土地に基礎や柱を設置する固定式の場合は建築物とみなされるため、申請対象外にするには土地に固定しない簡易構造のものを選ぶ必要があります。
まとめ
建築確認申請を不要にするには、土地への定着の有無や床面積、都市計画地域外の3号建築物などさまざまな条件があります。
原則的に一般的な建築物では建築確認申請が必要なので、着工前の申請を怠らないようにしましょう。
省エネ計算をはじめ、省エネ適判や住宅性能評価など、手間のかかる業務は外注し、自社のリソースをコア業務に集中させれば、円滑な計画進行が期待できるのではないでしょうか。
累計3,000棟以上の省エネ計算実績、リピート率93.7%、審査機関との質疑応答まで丸ごと外注できる環境・省エネルギー計算センターにぜひご相談ください。
※専門的な内容となりますので、個人の方は設計事務所や施工会社を通してご依頼をお願いいたします。
