BELSとZEHはどちらも「建築物の省エネ性能が高い」ことを示す認証です。
評価基準が似ていることもあり、区別が難しく感じる人もいるのではないでしょうか。
今回はBELSとZEHの違いをピックアップしました。基本的な知識の解説に始まり、違いのほか取得のメリット、注意点を解説します。
正しい知識を理解し、顧客への説明に活用してください。
BELSとZEHの基本知識
はじめに、BELSとZEHの概要を解説します。
要点を押さえると、BELSとZEHの違いが理解しやすくなります。
BELSとは
BELSは「建築物エネルギー性能表示制度」の略称で、建築物の省エネ性能を評価・認定する制度です。住宅・非住宅ともに対象で、一般社団法人住宅性能評価・表示協会が定めています。
評価は第三者機関が実施し、結果の信頼性が高いとされます。
性能は一般消費者にもわかりやすいよう、★(星)の数で表されます。
ZEHとは
ZEHは、省エネと創エネを組み合わせ、年間の一次エネルギー消費量収支をゼロ以下にした住宅です。大幅な外皮性能の向上や高効率設備の導入に加え、再生可能エネルギーシステムの搭載(創エネ)が必要です。創エネが必須である点が、ZEHのポイントとなります。
なお、ZEHは住宅版で、非住宅向けにはZEBが使われます。
BELSのZEH表示とは
※ 建築物省エネ法に基づく建築物の販売・賃貸時の省エネ性能表⽰制度|国土交通省(赤枠は編集部追加)
BELSを調べていると、「BELSのZEH表示」という言葉を目にする機会があります。これはBELSを取得し、ZEHを満たした住宅が、省エネ性能ラベルに「ZEHでもある」と表示できる制度です。
画像では赤枠部分が該当します。
ZEHを満たしていない住宅では、チェック欄がブランクとなります。
また、「ZEH水準」というものがありますが、こちらはエネルギー消費性能と断熱性能が基準を満たしていれば自動的にチェックが入ります。「ZEH水準」には創エネは必要ありません。
BELSとZEHの違い
BELSとZEHの概要を押さえたところで、両者の違いを詳しく解説します。
BELSとZEHの違いは4つあります。
制度か、住宅か
BELSは建築物の省エネ性能を第三者が評価し、★マークで表示する「制度(ラベリングシステム)」です。一方、ZEHは定められた省エネ性能基準を満たす住宅そのもので、「ZEH住宅」という呼び方が一般的です。
このため、「BELS住宅」という表現はあまり使われませんが、「BELS認証を取得した住宅」と言うことはできます。BELSは制度、ZEHは住宅の性能基準と考えると、両者の違いがわかりやすくなります。
評価基準
BELSは建物の省エネ性能を★(1~6)で表示する評価制度で、BEIや外皮性能(UA値)により評価されます。BELS自体は再エネ設備の有無を評価対象に含めません。
一方、ZEHはBEI≦0.8(地域により異なる)かつ、再生可能エネルギーの導入により、年間の一次エネルギー消費量の収支が概ねゼロとなる住宅です。また、外皮性能(UA値)にも地域ごとの厳しい基準があります。
例えば、東京23区(地域区分6)では、省エネ基準におけるUA値は0.87ですが、ZEHでは0.6以下が求められます。
ZEHは再エネ設備の搭載が必須であり、BELSよりも厳しい評価項目があるため、ZEHを達成するには高い省エネ性能と創エネ技術の両立が必要です。
補助金の交付有無
ZEHには補助金制度があります。以下は、新築のZEH住宅(注文住宅・分譲住宅)を対象とした、2025年度に実施中の補助金例です。
補助金制度 | 補助金額 |
令和7年度戸建住宅ZEH化等支援事業 | 55万円/戸+α |
子育てグリーン住宅支援事業 | 40万円/戸 |
ほか、各自治体による補助金を活用できる場合もあります。
国の補助金制度では、BELS単独での補助金対象とはなっていませんが、自治体によってはBELS評価取得を補助対象とする場合もあります。
建築物の資産価値
BELSの性能評価は、★の数で可視化されます。★の数が多いほど高性能の証明となり、住宅の資産価値も高まります。BELSは第三者機関が評価しており、信頼性が高く資産価値にも良い影響を与えます。
一方、BELSより高い性能が求められるZEHも、相応の資産価値を持ちます。また、ZEHは創エネ設備を有します。有事の際も自家発電が可能で、災害リスクに強い家との評価を得る場合があります。
BELS・ZEHを取得するメリット
BELSやZEHを取得するメリットは、5つあります。それぞれ、詳しく解説します。
住宅性能向上により、光熱費を節約できる
BELSは国が定める省エネ基準への適合度合いを示す制度であり、ZEHは省エネ基準より高い基準を達成した住宅です。
省エネ性能の高い住宅は使用するエネルギーが少なくて済み、光熱費節約につながります。
ZEHなら創エネした電力を自家消費したり、売電して収入にしたりすることも可能です。
災害時の備えになる
ZEHは再生可能エネルギー設備による発電が可能です。蓄電池を設置すれば、発電した電力を溜めておくこともできます。災害や突発的な事故などによって停電が起きても、電力を確保できる安心感が得られます。
住宅の資産価値が高まる
先の章で解説したとおり、BELSやZEHは未取得の住宅に比べて建築物の資産価値を高めます。住宅を売却する際も、相場より高値で取引できる可能性があります。
ライフスタイルの変化が激しく、住宅取得=終の棲家とは限らない現代において、住宅の資産価値を高めておくことは、リスクヘッジの1つにもなり得ます。
補助金を受けられる
ZEHはさまざまな補助金を活用できます。省エネ性能の高い住宅の普及は喫緊の課題であり、国が補助金を交付してでも実現したい施策の1つだからです。建築費の高騰が続く昨今、補助金の存在は大きなメリットといえるでしょう。
ちなみに、国庫支出の補助金同士の併用はできません。国庫と自治体の補助金は併用可能です。
建築会社の施工実績になる
一般消費者のあいだでも、省エネ性能の高い住宅の認知やニーズは高まっています。BELSやZEHの施工は、手掛けた建築会社の実績となり、アピールポイントとなるでしょう。
BELS・ZEH取得の注意点
BELSやZEHの取得に当たって、気をつけたいポイントを3つ解説します。
申請手続きが煩雑
BELSは、第三者機関に必要書類を送付し、評価・審査してもらう手続きが必要です。所定の手続きを経なければ、BELS評価書は交付されません。第三者機関とは、一般社団法人住宅性能評価・表示協会に登録済の機関です。
※ BELS申請~評価書等交付の流れ|一般社団法人 住宅性能評価・表示協会
国の補助金を利用するZEHは、ZEHビルダー・ZEHプランナーに登録済みの建築会社が手掛ける必要があります。ZEHビルダー・プランナーの登録先は、経済産業省です。
その上で、補助金を管轄する機関に対し、公募期間内に申請手続きを行います。補助金の申請にも事前の事業者登録が必要で、さらに予算が上限に達した時点で公募は締め切られます。
※ 子育てグリーン住宅支援事業 申請手続きの詳細|住宅省エネ2025キャンペーン
BELSにもZEHにも、申請の準備や手続きが煩雑だという意見も見受けられます。御社のリソースをコア業務に集中させ、業務効率を高めるためにも、手続きなどの事務作業は外注を検討しても良いかもしれません。
さまざまな図書の準備が必要
BELSもZEHも、申請のためには多くの図書が必要です。
〈BELS申請書類〉
- BELSに係る評価申請書
- 設計内容(現況)説明書
- 申請添付図書
付近見取図
- 配置図
- 仕様書
- 各階平面図
- 床面積求積図
- 立面図
- 断面図
- 各部詳細図
- 機器表
- 設備仕様書
- 設備平面図
- 制御図 等
- 一次エネルギー消費量および外皮計算書
- BELSに係る評価物件 掲載承諾書
- その他必要な書類
〈ZEH補助金申請書類〉※子育てグリーン住宅支援事業の場合
- 子育てグリーン住宅支援事業共同事業実施規約(新築注文・分譲用)
- 工事請負契約書
- 建築基準法に基づく「建築確認申請書」「確認済証」
- 子育てグリーン住宅支援事業基礎工事完了確認書
- 住宅の性能を証明する住宅証明書等
- 建築主の本人と家族構成の確認ができる住民票(世帯票)の写し 等
図書を確実に、速やかに揃えるには、外部の手を借りる方法もおすすめです。申請の準備から手続きまでを一気通貫でサポートするサービスの利用を検討しても良いでしょう。
建築コストの増大
BELSやZEHの基準達成には、高品質な断熱材やサッシ・ガラスの採用による外皮性能の強化や、高効率な空調・住宅設備の導入が必須です。従来の施工にくらべ、ZEHで数百万円単位の建築コスト増との試算もあります。コスト面に関して施主に丁寧に説明し、理解を得るひと手間がかかる可能性がある点も、押さえておいたほうが良いでしょう。
BELS・ZEHが注目される背景
日本政府は、「2050年にカーボンニュートラルを達成する」と、目標を掲げています。その実現に向け、省エネ性能の高い建築物の普及は、避けて通れない課題です。
環境省は、日本全体から排出される二酸化炭素の約1/3は、建築業界に起因すると試算しています。建築業界全体の省エネ化は、看過できない課題なのです。
また、近年の急激な光熱費の高騰により、消費者のあいだでもランニングコストの低い住宅ニーズが高まっています。
こうした背景から、BELSやZEHへの注目度は今後も高まり続けることでしょう。
まとめ
BELSとZEHは、どちらも建築物の省エネ性能を示します。BELSは制度、ZEHは基準と住宅そのものを指すと、覚えておくとよいでしょう。
また、ZEHのほうがBELSより高水準です。2025年4月よりすべての新築住宅に省エネ基準適合が義務づけられ、2030年には、すべての新築住宅がZEH水準となることが目指されていますので本記事を参考に理解を深めていきましょう。
省エネ計算をはじめ、省エネ適判や住宅性能評価など、手間のかかる業務は外注し、自社のリソースをコア業務に集中させれば、円滑な計画進行が期待できるのではないでしょうか。
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